【第16回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

雲の上の人

1

俺はBINGO!!さんと別れてレベルアップのために先を急いだ。

もちろん、BINGO!!さんにもTeam Xの情報収集をお願いしたし。

そしたら、

BINGO!!
全然大丈夫!たけどこちらからもお願いしていいかい!

まさかの頼み返し。

しかし俺から頼んでおいて「いや、無理っす」なんて言えるわけもなく、

DINA
もちろん、いいですよ

あっさりとBINGO!!さんの頼みを受け取った。

BINGO!!
ありがとう!
KILL°°BEってプレイヤーを見つけたら教えて欲しいんだ!
DINA
わかりました、ぎるびぃを見つけたら教えますね
BINGO!!
いやKILL°°BEだ!
DINA
はい、かるびぃですね
BINGO!!
いや、KILL°°BEだ!
とにかく頼むよ!
絶対に頼んむだからね!

BINGO!!さんの必死さが画面からでも伝わってくる。

一体なぜ、KILL°°BEというプレイヤーを探しているのか俺にはわからなかった。

2

だが、KILL°°BEについて深く考えることはなかった。

仲間になったとはいえ、今日初めて会った人に[尋ね人ヨロシク]と言われて真剣に考えるなんてできないもの。

それよりもDINAのレベルアップの方が大事。

今は強くなることしか頭にない。みんなと同じようにPVで悪のプレイヤーをたくさん倒し活躍したいんだ。

実際、まだPVでは1度も勝利してはいない。

成り行きでリーダーを任されたのだが、1勝もできないリーダーは流石にカッコ悪いと思う。

だから強くなりたかたんだ。

3

強さを求めてステージを森に移動した。

ここは中級者用ステージで現れるザコ敵も手強くなっているが、貰える経験値も多い。

俺は森のザコ敵をなぎ倒しながら奥へ奥へと進んだ。

最深部まで到達すると、そこには一人のプレイヤーが仁王立ちしていた。

俺の行く手を阻むかのようなそいつは、白雪姫に出てくる7人の小人みたいな格好をしている。

全身は黒く、目は赤い。

背中には羽がついている。ハネツキと呼ばれる強いプレイヤーだ。

「誰だろう、めっちゃ不気味なやつだな」

恐る恐るポインタを合わせると、

ITOSHIKI Lv175

と表示され焦った。

4

「まさか、ランキング1位のプレイヤーとここで会えるなんて」

驚きで手が動かない。

更にレベルが175ということにもびっくりしている。

現在のDINAのレベルと比べても天と地の差があるのだから。

強いプレイヤーはやはり違うんだと感じていた。

立ち止まっている俺に、ITOSHIKIから話しかけてきた。

ITOSHIKI
君か、DINAって奴は
DINA
そうです
ITOSHIKI
私に宣戦布告した奴か

5

「ゲッ!覚えてる。やっぱり怒ってるかな」

恐怖心と戦いながらキーボードを打つ。

で、打った文章が、

DINA
そうですよ

初対面で発した第一声とほとんど変わっていない。

ITOSHIKI
まぁいい、それより「Team X」を追っているのは本当か?
DINA
本当だよ。Team Xは弱いものをPVで狙いアイテムを奪っていくヒドい集団さ
ITOSHIKI
それがどうした?
DINA
えっ?
ITOSHIKI
このゲームでその行為が規約違反に当たるのかと聞いているのだ!
DINA
違反じゃない、でもTeam Xのやり方にはどこか納得がいきません!
ITOSHIKI
納得がいかなくても、この世界のルールでは合法なのだから何の問題もないのだ。
正義か悪かなんて決めるのは我々ではなくゲームを運営している人間が決めることだ。
ルールを否定すると、この世界の存在意義を問う。

ゲーム内のルールは運営側で決めることであって、俺たちが決めることではない。

そもそも同意ができないならゲームをやめる以外選択肢はない。

ITOSHIKIの主張は正しくて、俺は反論できずにいた。

6

ITOSHIKI
だが、今のTeam Xは間違った方向に進んでいる

訳がわからない。

さっきまでTeam Xを肯定してからすぐに否定するなんて、上位にいる人の考えはわからない。

DINA
どういうことだ?
ITOSHIKI
今Team Xの企んでいることはゲーム全体に関わることだ。
最悪、犯罪にもなる。

犯罪になるだと?!

Team Xはそんなに危険な存在なのか。

でも、犯罪と聞いて怯む俺ではない。

むしろ燃えてきたじゃないか。

DINA
なら俺たちの出番さ!俺たちがTeam Xを倒す!

しかし、[黙れ!]とITOSHIKIに一蹴されてしまう。

ITOSHIKI
この問題は私たちの問題だ
外部の人間に面白おかしく首を突っ込まれては困る

外部って、俺だって同じゲームに参加しているプレイヤーなのに。

DINA
俺たちには関係ないっていうのか、ゲームに関わる問題なのに?
ITOSHIKI
あぁ、そうだ
いずれこの空想の世界からたくさんの人が消える
これは私の予想だ
消えたくなければ手を引け
DINA
俺はそれを見過ごせと言うのか
ITOSHIKH
今の実力では何の役にも立たない
DINA
なんだと!

役に立たない。

その言葉、簡単に傷つくよ。

誰からも必要とされなかったときや助けを否定されたときは、かなり落ち込むものだ。

それを、ITOSHIKIはわかっているのだろうか?

しかし、反論できないのもまた事実。

今のDINAのレベルでは頑張ったところでTeam Xには太刀打ちできるわけがない。

KARASにも簡単に負けてしまったのだから。

7

「…やろう、ITOSHIKIに立ち向かうんだ」

俺は呟き、画面に映っているITOSHIKIを睨んだ。

この状態を打破するには、PVしかない。

力の差ははっきりしていて、勝つことは不可能かもしれない。

でも、認めてもらえるかもしれない。

ITOSHIKIの考えが変わってくれるかもしれない。

もしかしたら[この件から手を引け]とさらに強く言われるかもしれない。

どこに行きつくかは神とITOSHIKIにしかわからないが、このまま引き下がるのだけは絶対に嫌。

俺は後先考えず、ITOSHIKIにポインタを合わせた。

DINA
ITOSHIKI!勝負だ!
ITOSHIKI
身の程知らずとはこのことか
いいだろう、相手になろう!
一瞬で片づける!

ステージが対戦仕様に変わり、ITOSHIKIとのPVが始まる。

続く。

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。