【第28回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

第27回 空想戦記 -Sky Fliers Online-

実力と改造

1

電話で父さんといろんな話をした。

西高の2次募集を受けること、

友達と遊んで息抜きをすること、

母さんと上手につき合う方法などたくさん。

今まで誰にも言えなかったことを3年分一気に吐き出した気分。

「でもさ、西高を受験するのはわかったけど、僕友達いないからどうすればいいかわからないよ」

そう、僕には友達がいない。

でも父は即答で

『それならオンラインゲームをやってみたらいい』

とオンラインゲームを勧めてきた。

パソコンさえあれば誰でも参加できる空想の世界。

タイトルは、Sky Fliers Online。

「でも母さんが許してくれないし…」

『言わなくてもいい、悪いことをしているわけではないし、秘密にしたっていい』

「でも…」

『永太、お前は次高校生になる。この先自分で選択する機会が増えてくる。自分で進まなきゃならないんだ。他人の言いなりになるのは卒業しよう』

受話器から響く声が僕の耳を激しく叩き、父親のありがたい言葉を脳内にしまい込んだ。

2

電話を切った後、すぐにパソコンを開き、ゲームをダウンロードした。

勉強ばかりでゲームで遊ぶのは何年振りだろうか。

少なくとも中学3年間はゲームと無縁だった。

説明画面を見ながらキャラクターを作っていく。

全身黒のキトンをまとい、タイプは攻撃型、得意武器は双剣。

名前は、

「烏は頭がいいから…KARASにしよう!」

『KARAS』いい名前ですね。

こうして僕の『最初』のキャラクターKARASが誕生した。

3

西校の試験が終わったあとは、オンラインゲームにハマってた。

勉強も、嫌なことも、母さんのことも、

ゲームをしている時だけは忘れることができる。

KARASのレベルもスムーズに上がっていき、気がつくとハネツキになっていた。

1週間でハネツキまで到達するのはかなり実力のあるプレイヤーらしい。

春休みが終わる2日前。

ゲームにログインして間もなく、知らないプレイヤーに声をかけられた。

???
待っていたよ
1週間でハネツキになるなんて素晴らしい!

プレイヤーの名はNATSUHA。

この界隈で名を知らないものはいない。

Team Xの現在のリーダーでカリスマ的存在。

有名人に声をかけられて、気持ちが舞い上がっていた。

NATSUHA
KARAS君だね
我々と共にこの世界をぶっ壊そうではないか!

頑張ったって報われない世界。

勉強ばかりしてた日常に嫌気が差していたので、

『世界をぶっ壊そう』

というワードが魅力的に映る。

KARAS
よろしくお願いします!
NATSUHAさんについて行きます!

感激した僕は夢中になってキーボードを叩いた。

4

NATSUHAは僕に世界をぶっ壊すプラグイン、『NATSUHA TIMER』をセットしてくれた。

たちまちKARASのレベルは147まで一気に上がった。

NATSUHA
今世界をぶっ壊す鍵を開けた
君に使命を与えよう

・『王家シリーズ』を集める
・ITOSHIKIを倒す

使命を果たしたらまた新たな鍵を開けてやろう

その後の僕は狂ったようにたくさんのプレイヤーにPVを仕掛けた。

なんせレベルが147もあれば、ほとんどのプレイヤーは僕には勝てなかったから。

受験の時、僕だけ辛い思いをした。

それが今僕だけが楽しい思いでゲームの世界を駆け抜けている。

なんて素晴らしいんだ。

なんて楽しいんだ。

他人に勝つことが癖になって、ずっとずっとPVしていたくなる。

僕は無敵だ、

僕は最強だ、

僕は万能だ!

Team XにスカウトしてくれたNATSUHAに感謝だし、ゲームを紹介してくれた父さんにも感謝してる。

結局、春休みは母さんに見つからないようにオンラインゲームに勤しむ毎日だった。

続く

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。