【第83回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

第82回 空想戦記 -Sky Fliers Online-

師匠の教え

1

JINK
そんなことより!
PVで勝てる方法を教えてください!

俺はチャットで遺憾の意をあらわした。

ORANGE_HEARTさんの提示してくる特訓といえば、腕立て伏せ5万回だの、腹筋7万回だの、素振り10万回だの、ゲームになにも関係ないからだ。

俺は、俺の力を強くしたいわけではない。

PVで勝てる方法を知りたいのだ。

ORANGE_HEART
ということは少年!
近道をしたいということかな!
JINK
近道があるなら近道したい

意外な問いに思わずYESを伝える。

今まで出会った人はこのゲームに『近道』というもの教えてくれなかった。

だから、自力で強くならなきゃいけないと思い、必死になって戦っていた。

「なんだよ、近道があるなら教えてくれたっていいじゃないか」とみんなに不満を募りつつも、ORANGE_HEARTさんの提案には心底感謝した。

ORANGE_HEART
そうか!
なら伝授しよう!
JINK
おねがいします!

自然と肩に力が入る。

SEVENさんの教えてくれた裏ワザみたいに、パスコードみたいなものを入力するのか。

または、格闘ゲームのコマンドよろしく複雑なコマンドで出る必殺技があるのか。

または、伝説の装備『王家シリーズ』を授けてくれるのか。

いずれにしても強くなれるのだから、ワクワクがとまらない。

2

ORANGE_HEART
では少年よ!
俺の手順に従うがいい!
JINK
はい!
ORANGE_HEART
まずはメニューを開け!
JINK
はい、開きました!
ORANGE_HEART
次に、メニューの右上にある+のボタンを押せ!
JINK
はい、押しました。
ORANGE_HEART
開くと選択肢が出てくるから!
それの1番下を選択するんだ!
JINK
えっ…あ、はい
ORANGE_HEART
全てOKを選択し、一度メニューを閉じるんだ!
JINK
はい…
ORANGE_HEART
そしたらもう一度メニューを開き、『ショップ』を選択しろ!
JINK
???
ORANGE_HEART
そのショップにある『強情な祟剣』を選択し購入するんだ!
JINK
あの、これって、
ORANGE_HEART
さもすれば少年よ!
お前は間違いなく強くなれる!
JINK
なに課金アイテム買わせようとしているんですか!
しかもこれ『ごうじょうなたたりけん』って逆に弱くなる呪いのアイテムじゃないですか!

3

油断も隙もあったものじゃない。

ORANGE_HEARTさんはゲーム内通貨の最高額(5万円相当)を購入し、さらに高額なアイテム(しかも呪いの装備→装備すると弱くなるアイテム)を購入しろと促したのだ。

俺はメニューを開いた時点で様子を見たから課金することはなかったのだが。

鵜呑みにしたらとんでもないものを買わされていたかもしれない。

もちろん、ムッとした気持ちを文章にして伝える。

JINK
なにが、
「お前は間違いなく強くなれる!」
ですか

俺は課金ではなく、強くなりたいんです
ORANGE_HEART
少年よ!すまない!
近道がしたいと申してたから近道を教えたのだが不満のようだな!
JINK
当たり前ですよ
近道ってきいたから何かすごい必殺技とか裏ワザとかあるって思うじゃないですか
ORANGE_HEART
少年よ!
それはそちらの勝手な解釈ではないか!

だが、早く楽に強くなるには課金が1番なのも否定はしない!

だから少年よ!
強情な祟剣を購入するのだ!
JINK
買 い ま せ ん !

ORANGE_HEARTさんの言葉に納得しつつも、どこか自分のやる気の炎が小さくなっていくのも感じていた。

早く楽に強くなるなら課金が1番。

結局お金を積めばなんでもうまくいくって感じが気に食わなくて、高校生の俺にはどうしても追いつかないような気がして。

とにかくなんか、『努力しても無駄だ』って間接的に言われているような気がした。

ORANGE_HEART
少年よ!
そんなにこのゲームで強くなりたいのか!

そんな落ち込みを察したのか、ORANGE_HEARTさんの言葉がチャットウィンドウに表示されていた。

(強くなりたいに決まっている。)

俺はその想いを正直にORANGE_HEARTさんに伝えた。

ORANGE_HEART
少年よ!
それなら俺が鍛えてやる!
課金なしに強くなるなら覚悟が必要だ!

もし逃げ出したいのならいつでも言って構わない!
それでも強くなりたいなら俺について来い!
JINK
はい!
よろしくお願いします!

朝日で蒸し暑さが増してきつつある朝、俺は強くなることを誓った。

つづく。

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。