前回まで、
雲の上の人
1
俺はBINGO!!さんと別れてレベルアップのために先を急いだ。
もちろん、BINGO!!さんにもTeam Xの情報収集をお願いしたし。
そしたら、
- BINGO!!
- 全然大丈夫!たけどこちらからもお願いしていいかい!
まさかの頼み返し。
しかし俺から頼んでおいて「いや、無理っす」なんて言えるわけもなく、
- DINA
- もちろん、いいですよ
あっさりとBINGO!!さんの頼みを受け取った。
- BINGO!!
- ありがとう!
KILL°°BEってプレイヤーを見つけたら教えて欲しいんだ! - DINA
- わかりました、ぎるびぃを見つけたら教えますね
- BINGO!!
- いやKILL°°BEだ!
- DINA
- はい、かるびぃですね
- BINGO!!
- いや、KILL°°BEだ!
とにかく頼むよ!
絶対に頼んむだからね!
BINGO!!さんの必死さが画面からでも伝わってくる。
一体なぜ、KILL°°BEというプレイヤーを探しているのか俺にはわからなかった。
2
だが、KILL°°BEについて深く考えることはなかった。
仲間になったとはいえ、今日初めて会った人に[尋ね人ヨロシク]と言われて真剣に考えるなんてできないもの。
それよりもDINAのレベルアップの方が大事。
今は強くなることしか頭にない。みんなと同じようにPVで悪のプレイヤーをたくさん倒し活躍したいんだ。
実際、まだPVでは1度も勝利してはいない。
成り行きでリーダーを任されたのだが、1勝もできないリーダーは流石にカッコ悪いと思う。
だから強くなりたかたんだ。
3
強さを求めてステージを森に移動した。
ここは中級者用ステージで現れるザコ敵も手強くなっているが、貰える経験値も多い。
俺は森のザコ敵をなぎ倒しながら奥へ奥へと進んだ。
最深部まで到達すると、そこには一人のプレイヤーが仁王立ちしていた。
俺の行く手を阻むかのようなそいつは、白雪姫に出てくる7人の小人みたいな格好をしている。
全身は黒く、目は赤い。
背中には羽がついている。ハネツキと呼ばれる強いプレイヤーだ。
「誰だろう、めっちゃ不気味なやつだな」
恐る恐るポインタを合わせると、
ITOSHIKI Lv175
と表示され焦った。
4
「まさか、ランキング1位のプレイヤーとここで会えるなんて」
驚きで手が動かない。
更にレベルが175ということにもびっくりしている。
現在のDINAのレベルと比べても天と地の差があるのだから。
強いプレイヤーはやはり違うんだと感じていた。
立ち止まっている俺に、ITOSHIKIから話しかけてきた。
- ITOSHIKI
- 君か、DINAって奴は
- DINA
- そうです
- ITOSHIKI
- 私に宣戦布告した奴か
5
「ゲッ!覚えてる。やっぱり怒ってるかな」
恐怖心と戦いながらキーボードを打つ。
で、打った文章が、
- DINA
- そうですよ
初対面で発した第一声とほとんど変わっていない。
- ITOSHIKI
- まぁいい、それより「Team X」を追っているのは本当か?
- DINA
- 本当だよ。Team Xは弱いものをPVで狙いアイテムを奪っていくヒドい集団さ
- ITOSHIKI
- それがどうした?
- DINA
- えっ?
- ITOSHIKI
- このゲームでその行為が規約違反に当たるのかと聞いているのだ!
- DINA
- 違反じゃない、でもTeam Xのやり方にはどこか納得がいきません!
- ITOSHIKI
- 納得がいかなくても、この世界のルールでは合法なのだから何の問題もないのだ。
正義か悪かなんて決めるのは我々ではなくゲームを運営している人間が決めることだ。
ルールを否定すると、この世界の存在意義を問う。
ゲーム内のルールは運営側で決めることであって、俺たちが決めることではない。
そもそも同意ができないならゲームをやめる以外選択肢はない。
ITOSHIKIの主張は正しくて、俺は反論できずにいた。
6
- ITOSHIKI
- だが、今のTeam Xは間違った方向に進んでいる
訳がわからない。
さっきまでTeam Xを肯定してからすぐに否定するなんて、上位にいる人の考えはわからない。
- DINA
- どういうことだ?
- ITOSHIKI
- 今Team Xの企んでいることはゲーム全体に関わることだ。
最悪、犯罪にもなる。
犯罪になるだと?!
Team Xはそんなに危険な存在なのか。
でも、犯罪と聞いて怯む俺ではない。
むしろ燃えてきたじゃないか。
- DINA
- なら俺たちの出番さ!俺たちがTeam Xを倒す!
しかし、[黙れ!]とITOSHIKIに一蹴されてしまう。
- ITOSHIKI
- この問題は私たちの問題だ
外部の人間に面白おかしく首を突っ込まれては困る
外部って、俺だって同じゲームに参加しているプレイヤーなのに。
- DINA
- 俺たちには関係ないっていうのか、ゲームに関わる問題なのに?
- ITOSHIKI
- あぁ、そうだ
いずれこの空想の世界からたくさんの人が消える
これは私の予想だ
消えたくなければ手を引け - DINA
- 俺はそれを見過ごせと言うのか
- ITOSHIKH
- 今の実力では何の役にも立たない
- DINA
- なんだと!
役に立たない。
その言葉、簡単に傷つくよ。
誰からも必要とされなかったときや助けを否定されたときは、かなり落ち込むものだ。
それを、ITOSHIKIはわかっているのだろうか?
しかし、反論できないのもまた事実。
今のDINAのレベルでは頑張ったところでTeam Xには太刀打ちできるわけがない。
KARASにも簡単に負けてしまったのだから。
7
「…やろう、ITOSHIKIに立ち向かうんだ」
俺は呟き、画面に映っているITOSHIKIを睨んだ。
この状態を打破するには、PVしかない。
力の差ははっきりしていて、勝つことは不可能かもしれない。
でも、認めてもらえるかもしれない。
ITOSHIKIの考えが変わってくれるかもしれない。
もしかしたら[この件から手を引け]とさらに強く言われるかもしれない。
どこに行きつくかは神とITOSHIKIにしかわからないが、このまま引き下がるのだけは絶対に嫌。
俺は後先考えず、ITOSHIKIにポインタを合わせた。
- DINA
- ITOSHIKI!勝負だ!
- ITOSHIKI
- 身の程知らずとはこのことか
いいだろう、相手になろう!
一瞬で片づける!
ステージが対戦仕様に変わり、ITOSHIKIとのPVが始まる。
続く。
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