【第18回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

第17回 空想戦記 -Sky Fliers Online-

テスト明け

1

オンラインゲーム三昧だった楽しい週末は終わりをつげ、今日は月曜日。

しかも、先週のテストが一気に帰ってくる日だ。

1時間目の英語から始まって、数学、理科、歴史、保健体育、国語。

うん、フルメンバーだね。考えただけで憂鬱になってしまったよ。

気持が乗らないせいなのか、いつもより体が怠い気がする。

やっぱり今日のフルメンバーの仕業かな。

こやつらはまず座学という名の催眠術をかける。

あなたはだんだん眠くなーる、眠くなーると言わんばかりに睡魔を誘い、気がつけば夢の中。

勉強なんてできやしない。

次にテスト期間という時限爆弾と、

リュウネンダゾ

という呪文を何度も何度も唱えてくる。

怯えた俺は怖くなり、寝れない日々が続く。

最後に、

アカテン!

という必殺スキルで俺を絶望に叩き落とす。

睡眠、不眠、赤点のジェッ○ストリームアタックで俺は勉強がますます嫌いになっていくんだ。

永太は、「勉強はしなくちゃならないものだ」ってよく言ってるけど、俺は違うと思ってる。

だって高校の勉強ほとんどが暗記ばかりで、

成績=記憶力になっている。

だから成績が良いことは記憶力がいいってことになり、

勉強できるという物差しにはならないんじゃないかな。

他にも、勉強以外で体験していくことはたくさんあるのになぁと思う。

それに、学校じゃ教えてくれないことや経験だってたくさんあるんだ。

学科だけが全てじゃない。

勉強できるやつに限って、

「学校が全て、成績が全てだ」

って考えてるヤツたまにいるんだよなぁ。

高校受験の時だって、息抜きにと思って友達をゲーセンに誘った時も、

「そんなの社会に出て必要なことか?」

って半ギレされた。

「時に息抜きも大事だよ」と説得したんだけど、納得はしてもらえなかった。

学校以外、勉強じゃなくても、学べることはたくさんあるのになぁ。

あれこれ考えているといつの間にか学校に着いた。

テストが返ってくる、あー…憂鬱だ。

2

英語の先生は答案用紙の入った封筒を頭の上にあげて、

「よーしお前ら、楽しみにしていたテストを返すぞー」

と嬉しそうに話した。

なんで教師ってテスト返却の時はこんなにも偉そうなんだろう。

「俺はお前らよりも偉いんだぞ、先生だからな!」

といった雰囲気が滲み出てる。

「それじゃー名前を呼ぶから取りに来るように」

3

「あぁー今回はダメだったぁぁぁ」

「意外と点数取れていた、ラッキー」

歓喜の声や悲鳴があちこちで聞こえてくる。答案用紙の返却っていつもこんな感じでうるさくなるんだよね。

「次、城戸永太」

出席番号順で永太が先に呼ばれた。

「テスト、どうだった?」

俺は席に戻ってきた永太に話しかけた。

永太は頭がいいから高得点で

「ヒャッフフーゥ」って奇声を上げながら俺に自慢してくるに違いない。

しかし、

「…こんな感じ」

俺に答案用紙を渡してきた永太は、なんだか元気がない。

用紙の右上は折れて隠れている。ここに点数が書かれているのだろう。

パッと見ても明らかにマルの数が多い。

間違っている個所を探すほうが大変かもしれない。

どんだけ点数高いんだよと内心感じつつも、恐る恐る隠れている部分をめくろうとした。

「次、瀬川肇」

俺の名前が呼ばれた。

4

「まぁよくやったと思うけどもう少し頑張れや」

先生に褒めか貶しかわからない一言を頂き、答案用紙を返してもらった。

右上の隠れている部分を開いてみてみると、

69点

逆さにしても、透かしてみても、虫眼鏡でみてもそこには変わらず69点と書かれていた。

この良くも悪くも69点だと優等生にも笑いのネタにもならない。

中途半端に収まってしまうのが許せないんだ。

「はぁー…」

席に戻って大きめのため息をついてしまった。

「お前も点数悪かったのか」

今度は永太が話しかけてきた。

「あぁ、まぁ悪かったわな」

多分永太と理由は違うがな。

「そうだ、永太って何点だったのさ、見るよ」

「いいけどそんなに点数良くないぜ」

落ち込んでる永太はお構いなしに点数を確認してみた。

チラッと見て思わずのけ反った。

だって、

「ビックリしたわ93点で落ち込むなんて、もっと喜べよ!」

5

「この点数じゃダメなんだよ…この点数じゃ…」

永太は93点じゃ満足いかないらしい。

答案用紙を眺めるたびに悔しそうな顔をしている。

どんだけ意識高いのさ。

俺だったら英語のテストで93点も取ったら余りのサプライズで気絶してしまうわ。

「でもよ、93点ってスゲーんだぜ、なんつーかもっと自分を褒めてもいいと思うんだぜ」

「お前と一緒にするな!」

永太は俺のフォローを一蹴した。

「肇にわかるものか、どんだけ頑張っても認めてくれない俺の気持ちなんてわかるものか!」

かなり力の入った演説だが、同時に寂しそうな雰囲気も伝わってくる。

まるで何か大きなものに抵抗しているような、そんな感じ。

「俺は永太じゃないし、わかんねーよ」

こんな時「わかるよ」っていえたらよかったのだけど、突き放してしまった。

本当なら自分の体験を重ね合わせて共感してやればよかったと思うのだが、

93点も取って満足いかないのはどうしても理解できなかった。

俺とは次元の違う悩みでどうしたらよいかわからない。

「…とりあえずほっといてくれよ」

と、永太は俯きながら小さな声で言った。

続く。

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。