前回まで、
最後のKARAS
1
SIDが帰ってきた。
KARASとのPVが終わったみたい。
しかもSIDがここに残っているということは…
- DINA
- 勝ったのか
- SID
- …えぇ
元気のない返事だ。
文章でしか読み取れないから本当の気持ちはわからないけど。
きっとKARASとのPVで疲弊したのだろう。
- MOMOKO
- それじゃあKARASは
- SID
- きっと病院にとばされたと思う
- DINA
- それじゃ急がなきゃ!
KARASに聞きたいことがあるから
そう「正体はGINJIなのか」と問うために。
- SID
- 私の真似をするな!
えっ、どういうこと?訳わからん。
確かにPV観戦中に「聞きたいことがある」的なチャットをみたけど真似したつもりはないし関係なくね?
- DINA
- ちがうよ、本当に聞きたいことがあるんだって!
- SID
- とりあえず病院に向かおう
- DINA
- 無視すんなぁぁぁぁぁ!!
俺の叫びなんてお構いなしで走り出した2人。
本当に無視していきやがった。
2
- MOMOKO
- あれ?
しーちゃん、これKARASじゃない?
画面が切り替わってすぐに、KARASが倒れていた。
- SID
- 「バックWP」というアイテムを使用したのだろう
しばらく動けないけどな
KARASはうつ伏せのままだ。
ゲームとはいえ不思議な光景。
- DINA
- 動けないならちょうどいい、
聞きたいことがある - KARAS
- なんだ
- DINA
- お前、本当は『GINJI』なんだろ
3
- KARAS
- なっ?!
- SID
- えっ?
- MOMOKO
- (^ω^)
KARASは動揺し、SIDは驚き、MOMOKOは…よくわからない。
- SID
- なんでKARASがGINJIなんだ?
- DINA
- お友達登録の表示、GINJIの部分がKARASになってる
- SID
- 今確認した
確かにKARASが登録されている
よく見つけたな - DINA
- だろ^_^
SIDに褒められて嬉しかった。本当は ITOSHIKIの助言だったんだけど。
- KARAS
- まさか、お友達登録がIDで登録されているなんて…
- DINA
- やっぱりGINJIだったのか
- KARAS
- あぁそうだよ!
KARASは自分がGINJIだということをハッキリと認めた。
4
- SID
- なんでTeam Xなんかに加入したの
同じ仲間が倒すべき敵のチームに所属しているなんてありえない。
もしくは今流行りの潜入か何かで組織を内部から壊滅させようとかそんな企みかな。
- KARAS
- ストレス発散だよ
なんとも身勝手な理由だ。
- DINA
- そんな目的のために弱いものを狙ったり暴れているのか
- KARAS
- そんなだと、
お前らにわかるものか! - DINA
- どういう意味だよ
- KARAS
- わかるわけないよな!
上から押さえつけられる気持ちなんて
わかるわけないよな!
いやいやKARAS…永太本人に何があったんだ?
かなり心が荒れていることが文章からも伝わってくる。
MOMOKOが[ちょ、落ち着いて^^;]となだめるも、KARASは逆上する。
- KARAS
- 落ち着いてられるか!現実で不自由な思いをしてるならせめて空想の世界だけでも自由で思い通りにいきたかったんだよ!それの何が悪いって言うんだよ!
いつもの冷静で落ち着いている永太ではなかった。
自身の心の思うがままにキーボードを叩いて訴えている。
こうなったら止められない。
だから俺も思ったことをハッキリ言うことにした。
これはDINAとKARASの問題ではない。
俺と永太の問題だから。
- DINA
- KARAS
- KARAS
- なんだよ!
- DINA
- お前、さっき『俺の気持ちなんてわかるもんか』って言ってたよな
- KARAS
- それがどうしたのさ
- DINA
- そんな気持ちわかるわけねぇよ!
俺はお前じゃないんだし、共感出来たとしても過去の体験を重ねてるだけなんだよ!
でもな、わかってもらえないとしても、
壊れる前に言ってくれよ!
確かに俺はバカだから解決はできないかもしれな いけど、お前の辛さは半分にできるかもしれないだろ!
……友達だろ?俺たち - KARAS
- …ともだち?
- DINA
- そう、俺はKARAS
いや、GINJIのRTのともだちだ!
俺はそう思っている! - KARAS
- DINA…
5
パソコンのディスプレイを見ながら涙をポロポロ流していた。
『友達』なんて言葉はあり得ないと思っていた。
だけど、肇が俺のことを『友達』だと思っていたなんて。
嬉しくて涙が止まらなかった。
入学して間もない4月。
人見知りだった俺にはじめて話しかけてきたのは、隣の席の肇だった。
最初の印象は『バカな陽キャ』だと思っていたから、関わらないようにしていた。
だけど向こうから話しかけてきたんだ。
「ずっと俯いているけど眠たいの?」
「……」
話しかけても得なことなんてないからずっと俯いたまま。
「えーと、たしか名前は、手前は加藤だから…『ギンジくん』だね!」
あまりにも大きな声だから、ギンジなんて勘違いされても困る。
飛び起きて机をバンッと叩き、
「僕は城戸永太だ!」
と大きな声で叫んだ。
もちろん周りはどよめいた。
でも肇だけはちがう。
ニコニコしながら、
「やっぱり、そんな顔もできるじゃん」
って言ったんだ。
それってイケメンが夢見る少女に向かっていう言葉じゃん。
あまりにもバカバカしくて、
「いや気持ち悪いわ」
って返したんだ。
2人でゲラゲラ笑って周りはドン引きしてたかもしれない。
これがキッカケで、僕は肇とよく話すようになった。
続く。
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