【第37回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

【第36回】空想戦記 -Sky Fliers Online

DOLPHIN事件

1

結局、永太から詳しい情報を得られなかったので、インターネットで調べてみることにした。

『DOLPHIN事件』と入力し、ググってみる。

すると、

『 -Sky Fliers Online-の都市伝説や事件に関するスレ まとめ』 

というホームページが1番上に表示された。

「ここに、DOLPHIN事件について書いてあるのだろうか」

恐る恐るアクセスしてみる。

画面がいきなり真っ暗になったと思ったら、不気味な書体赤い字で『 -Sky Fliers Online-の都市伝説や事件に関するスレ まとめ』 と表示された。

恐怖を煽るような、イヤな雰囲気のページ。

下へスクロールすると、

『ハネツキが採用された理由』

『消されたキャラクター』

など様々なタイトルがある。

『NATSUHA TIMERの噂』もあった。

自分が体験した出来事が出てくると信憑性が増すものだ。

俺はこの不気味なサイトを信用して記事を探した。

「えーと、DOLPHIN事件はどこだ」

目を細めてディスプレイの隅から隅までくまなく探した。

予想以上に記事数が多いから、なかなか見つからないのさ。

字も小さいしね。

「やっとみつけたぁ」

スクロールした先に『DOLPHIN事件』の項目を見つけた。

リンクをクリックしたら、以下の事が書かれていた。

2

DOLPHIN事件

かつてこのオンラインゲームには、プレイヤーネームSKULDA(スカルダ)が率いていた、

『S.E.O.』というチームがあった。

それは当時ITOSHIKIが率いていた最強チーム、Team Xと同じ実力があったチームだ。

リーダーのSKULDAはドクロの仮面を被り、服装はタキシード。

ドラキュラをイメージするような服装だが、タキシードはマントをまとっていたため、ほとんど見ることはない。

そんな怖い風貌のSKULDAだが根は優しく、チームメイトを大切にしていた。

そんなSKULDAの人間性が認められて、いつしかS.E.O.はメンバー50人を越える大きなチームに成長した。

だが、そんな幸せも長くは続かなかった。

3

ある日1人のプレイヤーがS.E.O.を訪れた。

名前はDOLPHIN。

水色の服と少年のような風貌が特徴だ。

レベルは10。

[僕を、S.E.O.に入れてください!]

突然のことでチームの誰もが驚いた。

強豪ぞろいのチームだったので、DOLPHINの加入には反対の声も多かった。

[レベルの低いプレイヤーをチームに入れる必要はない]という声が圧倒的。

だが、リーダーのSKULDAは違った。

[チームに所属するのにレベルも資格も何もない!受け入れよう!]

心優しいSKULDAは周囲の反対を押し退けて、DOLPHINをチームに迎え入れたのだ。

4

DOLPHINがチームに加入してからほどなくして、

チームメイトの行方不明が多発するようになった。

当初DOLPHINを受け入れたことによるリーダー不信の脱退だと思った。

しかし、行方不明は日に日に増え、

SKULDAに信用を寄せていたNo.2のEAGLEまで行方不明になり、

遂にチームメンバーは残り10人となってしまった。

さすがにおかしいと感じたSKULDAは、行方不明の原因を調べることにした。

5

だが、原因はすぐに判明した。

KILL°°BEという不気味なキャラクターのせいなのだ。

噂によると、KILL°°BEはPV相手を削除するプラグインが入っているらしく、今まで大量のキャラクターを不正に削除してきたとのこと。

別名Ghost murder KILL°°BE

幽霊の殺戮者

KILL°°BEとPVをして(物理的に)戻ってきたプレイヤーはいなかった。

事態を知ったSKULDAは激怒し、自らKILL°°BE討伐に乗り出したのだ。

6

しかし、事態は思わぬ方向へと向かった。

何とDOLPHINがいきなり、

[俺はホントハKILL°°BEダ]

と言ってきたのだ。

つまり、サブキャラクターのDOLPHINになってチームに潜入し、情報を入手し、KILL°°BEにチェンジしてチームメイトを狩っていったらしいのだ。

DOLPHINはスパイでありKILL°°BE。

それを本人が申し出たからまた驚きだ。

これを知ったSKULDAは、残りのメンバーの意見を聞かず、即座にS.E.O.を解散させた。

残りのチームメイトを守るため、ゲームをプレイしているみんなのため。

また、DOLPHINと隔離させるという理由もあったみたい。

以下解散した日の掲示板に書かれていた文。

S.E.O.のみんな

突然の解散ゴメン

でもこうするしかなかった。

アイツのせいでたくさんのチームメイトが死んだ。

このままでは終われない。

DOLPHINを受け入れた私と、アイツに罰を与えなければいけない。

こんな私を許してくれ。

SKULDA

今思えばこの文章についてもっと疑問に思うべきだと感じたのは、

ことが起こってしまってからだった。

7

あれからSKULDAも、KILL°°BEと同じプラグインを入手し、DOLPHINにPVを無理やり申し込んだ。

チームを壊された怒りが、SKULDAの心までも変えてしまったのだ。

PVは一方的なものになった。

逃げ回るDOLPHINに対してSKULDAの攻撃は容赦ない。

いつもSKULDAはそんな野蛮なことはしなかった。

無論、初心者相手にPVを申し込むこともしない。

SKULDAの得意武器である投げナイフとダガーナイフでDOLPHINを追い込んでいく。

そして、DOLPHINを削除した。

いや、殺したと言った方がいいだろうか。

いずれにしても、SKULDAはDOLPHINをオンラインゲームの世界から消したのだ。

その日を境に、SKULDAも姿を見せなくなった。

正義とはいえ、DOLPHINを殺した後悔なのか、

チートをした罪悪感なのか、

いずれにしても察知したのだろう。

自分のしたことがとても大きなことだったことなのかを。

これがDOLPHIN事件の全てである。

続く。

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。