前回まで、
ZONE with Bot
1
砂漠に向かっていると、他のプレイヤーとすれ違う。
1人や2人ならいつも通りだが、今日はやけに数が多い。
時には7〜8人程の塊が迫ってくることもあった。
一方で、砂漠に向かう人は俺たちを除いて誰もいない。
まるで川の流れに逆らって泳いでいるような気味悪さを感じている。
一体NATSUHAは砂漠で何をしようとしているんだ。
- DINA
- ここから先が砂漠だ
みんな準備はいいか?
俺は砂漠の手前で止まり、みんなに戦う準備ができているか確認をした。
- GINJI
- 準備は全て始まりの街で済ませたよ
- MOMOKO
- 回復が必要ならいつでも言ってねー^ ^
- SEVEN
- 拙者も準備OKだ!
- SID
- 死ぬぞw
SIDの言葉だけ理解不能だったが、みんな準備はできているみたい。
- DINA
- SID、死ぬぞって大袈裟なw
- SID
- 何言ってんだDINA
KILL°°BEがいる可能性だってある
死ぬ気でいくぞって意味w - DINA
- 略しすぎだからw
せめて『気』は抜くなよw - SID
- …私が気を緩めているだと?
ふざけるな!
誰かSIDの暴走を止めてくれ。
とはいえ、準備もできたし士気も高い。
どんな困難が待ち構えていても乗り越えられるだろう。
俺は[みんな行くぞー!]と合図をし、一斉に砂漠に突入した。
2
ブラックアウトした画面。
右下の[Now loading…]が点滅し、2〜3秒程で砂漠のステージになった。
延々と広がる黄色い砂の山にビカビカと光る灼熱の太陽。
そんな風景を見せる砂漠だが、なんだか様子がおかしい。
- GINJI
- 誰もいない…
少し進めば他のプレイヤーに出会うのだが今日は違う。
俺たち以外のプレイヤーが全然見当たらない。
しかも、それだけではなく、
フィールドに存在しているNPCも見当たらないんだ。
いつもはNPCとプレイヤーで賑やかなのに、シーンとしている。
MOMOKOは[なんだか気持ち悪いね…]と呟いた。
気持ちはよくわかる。
- SEVEN
- だが逆にTeam Xのメンバーは探しやすいではないか
- SID
- …確かに、NPCやプレイヤーで画面が埋まるよりはいい
- SEVEN
- いざ!出陣!
SEVENとSIDが先陣をきった。
その後ろをGINJI、MOMOKOと俺も続く。
とても頼もしく見える2人だが、どちらも女子だ。
心の中では『なんで俺が先頭に立たなかったのかなぁ』と後悔している。
情けなくて自分を責めたというのもあるけれど。
- SEVEN
- なに?!
突然、SEVENとSIDの足が止まった。
俺たちも追いつくと、そこには見たこともないキャラクターが立っていた。
ガスマスクに防弾チョッキ風のベスト。
全身黒。
装備は銃、いやマシンガンといってもいい。
どこかの戦闘員を彷彿とさせる出立ちのキャラクターだが、1体ではなく複数いる。
画面で確認できるのは5人程。
こんな明らかにヤバいものを目の前にしたので、俺はとっさに[ヤバイ!逃げるぞ!]とみんなに指示をした。
後ろを向き、戻ろうとしたのだが、ガスマスク集団が戻る道も封鎖していた。
俺たちは不気味なガスマスク集団に包囲されてしまった。
3
状況は最悪だ。
だが、立ち止まっていてもやられるだけ。
俺たちは覚悟を決めてガスマスク集団と戦うことにした。
PVするために、選択しようとしたのだが、どうも様子がおかしい。
ガスマスク集団の1人にポインタを合わせてクリックしても、PVの画面に移動しないから。
ゲームが壊れたのかとも感じた。
- GINJI
- プレイヤーじゃない!
NPCだ! - DINA
- えっ、したらPVではなくて通常の戦闘ってこと?
- GINJI
- その通り
でもNPCって基本ゴブリンとかのモンスターなのに、
なんで人型のNPCがいるのかよくわからない - SID
- …これがNATSUHAの言う計画なのかもね
- DINA
- なるほどね
でも、このまま突っ立っていても意味がない
全力で戦おう!
俺はチームを鼓舞するために気合を入れた。
するとSIDが采配をする。
- SID
- SEVENと私は先頭で戦う
GINJIとMOMOKOは後援をおねがい - MOMOKO
- おっけーだよー
- SEVEN
- 御意!
- GINJI
- わかった!
みんなが返事をしている中で、1人だけ戸惑っている俺がいる。
SIDからの指示がなく、どうすればいいのかわからないから。
おそらく指示を忘れただけだと考え、[俺も前衛で戦う]と伝えた。
SIDからは[死ぬぞ]と帰ってきた。
[そうか、『死ぬ気で行くぞ!』ってことだね]と返したら、
- SID
- 本気で死ぬから何もするなと言う意味ww
って返事がきた。
「俺は役立たずか」と怒りそうになったがここは冷静になり、和むような冗談を言ってみた。
- DINA
- 緊張せず気を抜いて戦えってことなんだねwww
これで笑いの1つでも取れると思ったら、
- GINJI
- みんないくぞ!
完全にスルーされた
続く。
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