前回まで、
センパイとの出会い
1
「はぁ……今日から初出勤、気持ちが重たいなぁ」
今日は転職先の初出勤日。
私は独り言を呟きながら身支度をしていた。
新しい職場に期待を寄せながらも、どこか緊張や不安に支配されていたのかもしれない。
前職とはまた違う組織に入ろうとしているのだから、不安も緊張もあって当然だ。
と、私自身にいいきかせた。
「うわやば、もうこんな時間、初日に遅刻したら印象最悪じゃん」
腕時計で時間を確認するともう出発の時間だ。
少しでもテンションが上がるために勢いよく玄関から飛び出した。
2
会社には遅刻することなく到着。
一通り挨拶回りをしたところで私の担当部署に案内された。
机に向かって仕事をしている皆さんの姿は、まさにイメージしていたままの光景。
「緊張しているのかい?」
部長は少し俯いていた私の顔を覗き込んでいった。
「はい、まだわからないことも多いので」
「心配いらないよ、みんな最初の1ヶ月で大体覚えるからさ」
多分部長は私を安心させるためにこの言葉を言ったに違いない。
でも緊張していた私にとっては大きなプレッシャーをかけられているように感じてしまった。
「はい……」と返事をしながらも、
(これって全部の仕事を1ヶ月で覚えろってことじゃん。ムリムリムリムリ!)
と心の中では今にも泣きそうな心境だ。
そんなとき、一人の青年が私の前にやってきた。
身長は長身で痩せ型。多分180㎝くらいはある。
髪型は黒髪の短髪。
鼻が大きく、しっかりとした鼻筋。
目は丸みがある可愛らしい大きい目で黒縁のメガネをかけている。
パッとみるとハーフ顔の男性。
年齢は私の少し上くらい、多分20代後半から30歳前後。
自信満々の表情からは仕事できますオーラが漂っていた。
「緒方守(オガタマモル)です、これからよろしく池田さん」
声がまたカッコよく、優しい雰囲気も感じる。
「はい、池田奈々です!よろしくお願いします!」
私は今日一番の大きな声で緒方さんに挨拶をした。
3
それから私は『1日も早く職場に馴染めるように』と頑張って勉強した。
仕事の内容もそうだし、忘れそうなことはすぐにメモを取ったりして。
そしてわからないことはすぐ緒方さんにききに行った。
一生懸命に頑張った結果。私は1ヶ月で覚える会社の業務を一週間で習得していた。
これは会社の諸先輩方のおかげでもあるし、何より緒方さんの教え方が優しくわかりやすかったからだと思っている。
仲良くなった会社の先輩からきいた情報では、緒方さんは「デキる男」の三本指に入るくらい仕事の効率がよく、成績はいつもトップを独走。
そのためみんなからの信頼もアツく、みんな緒方さんの指示を信頼しているとのことだった。
そんなスゴい人に教えて頂いていると思った奈々は、緒方さんを呼ぶときに敬意を払って『緒方センパイ』と呼ぶようにした。
当の緒方センパイは照れながらもいいよっていってくれた。
笑った顔もまた爽やかで素敵なの。
つづく。
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