前回まで、
再びログイン
1
「よしっ、今日は金曜日、やってやるぜぇ!」
俺は今、パソコンの前にいる。
コントローラをギュッと握って画面を見ている。
やる気は満々だ。
画面にはこの前と同じSky Fliers Onlineのタイトル。そして『しばらくお待ち下さい』の文字。
この表示が出ている時が一番長い感じがする。つまらない授業のように1分が長く感じる。
楽しい時間は早くすぎるのに。
そんなことを考えてるうちにロードが完了したみたいだ。
この前作ったマイキャラ『DINA』を選択し、俺は再びゲームの世界へ飛び込んだんだ。
2
ログインして、最初に来た場所はあの時と同じ『始まりの街』だ。
ここからいつもスタートするらしい。
ただ、前回ログインしたよりも人数が多いような気がしてならない。
やはり金曜日だから時間に余裕ができて、たくさんの人がログインするのだろうか。
そんな事は気にせずに街を見学することにした。
しかし、プレイヤーが多くて店とか良く見えなかった。
案内してくれる人が欲しいと思ったその時、俺のケータイに一通のメールが届いたのだ。
3
メールの相手は永太だった。
俺はタイミングが悪い奴と思いながらも、コントローラを置きケータイを開いた。
別にダンジョンの中でもPVの最中でもなかったので焦る必要もなかった。十分メールに対応できる時間はある。
メールの内容は、「今ログインしてる?」だった。
ログインってこのオンラインゲームの事なのか?と疑問に思ったが、それ以外思いつかなかったので、
「今ログインしているよ」と返信した。
これでゲームに戻れると、コントローラを持った瞬間、再びケータイが鳴った。
返信してから1分も経たない間に永太から返信が来たのだ。
内容は、「名前は?」だった。
俺は「DINAだ」と返信した。
ここまでのやりとりで1分かかってない。
俺たちは頑張れば早打ちのプロになれると思う。
どうせまた直ぐに返信してくるだろうと考えた俺は、あえてコントローラーは持たずにメールを待った。
内容は「わかった」の一言だけ。
その一言の意味が理解できないまま俺はゲームに戻った。
4
まずは道具屋に向かった。
初めてダンジョンやフィールドを歩くときは回復アイテムが重要だとマニュアルに書いてあったので、薬草を大量に買い漁った。
道具屋を出てアイテムを開くと画面いっぱいに薬草が表示され、「これで大丈夫」という安心感で満ちていた。
次に武器屋に寄ってみる。
中に入ると店員さんが二人いて、販売員と武器強化員に分かれているみたいだ。
とりあえず武器の販売員さんに話しかけて、武器の購入画面に移す。
まぁ一口に武器と言っても種類は様々で、俺が装備している剣の他にも魔法杖、銃や弓など様々な種類がある。
更に武器の中でもタイプが分かれるらしく、剣系の武器だと 「片手剣」や「双剣」など色々な種類があるみたいだ。
俺は得意武器に「大剣」を選択したので、大剣の項目を選択した。
販売している武器の数はたくさんあったのだが、全て赤色の表示になっている。お金が足りなくて買えないみたい。
「…薬草買いまくったのがマズかったかなぁ」
だがお金がなくてもそれほど落ち込んではいない。
ストーリを進めて敵キャラやボスキャラを倒したらお金が貰えるし、P Vで他のプレイヤーに勝てば賞金として相手の手持ちの半額が貰える。
お金を稼げる手段はいくらでもあるのだ。
俺はお金と経験値を稼ぐために、武器屋を出て、始まりの街を後にした。
5
最初に選んだフィールドは、『草原』。
ここは初心者には丁度良いフィールドだと書いてあったので、真っ先に選んだ。
チュートリアルで何度も戦ったこともあり、レベルは最初の時と比べて上がっている。
更にパソコンのコントローラーにも慣れてきたので思い通りに攻撃できるまでになっていた。
加えて初心者を対象にしているからなのか、敵はそんなにも攻撃してこない。
だから草原の敵は簡単に倒せることができる。道場で苦戦した時とは違い、スムーズに進んでいる。
倒れた敵は消え、経験値とお金が入ったというアナウンスがチャットウィンドウに流れてくる。
1体、また1体と次々に敵を斬っている。
そんなDINAが敵を斬っている姿が自分の姿とリンクして見えてた。不思議な感覚。
自分はコントローラーを握って、ボタンを押しているだけなのに、自分が敵を斬ってるように思えるのだ。
そんな錯覚に陥りながらも、自分がカッコいいと思ってる俺がいたのだ。
続く。
コメントを残す