前回まで、
蒼鎧と鎖槍
1
不意打ちに近い形でPVを申し込み、今はスタンバイ状態。
清水の舞台から飛び降りる覚悟で向かったのは良かったものの、不安は取りきれていない。
俺は対戦相手のKAHLUAをじっくりと舐めるように観察した。
KAHLUA。
蒼いプレートアーマーをまとっている。
バイザーは装着しておらず、短い黒い髪と細くキリッとした顔が露出している。
太刀打ちは細身で三角形の穂をした槍を右手に持っている。
- レベル101
- 体力300
- 得意武器はランス
- ハネツキ
- レベル42
- 体力150
- 得意武器 大剣
- 力の解放 アリ
レベル、体力、武器からビジュアルまで、どれを比べても勝てる要素がない。
「でも、俺には力の解放があるじゃないか」
自分を鼓舞するための言葉を自身にかける。
確かにレベルや実力の差は大きいけど、逆転の要である『力の解放』があれば勝てる可能性があるからだ。
(とりあえず慎重に行こう、敵の攻撃を1発でももらったら致命的だし)
と、思考を巡らせていた時、KAHLUAがダッシュで近づいてきた。
2
接近戦に持ち込まれるとマズイと思い、装備をハンドガンに変更し乱射。
しかしKAHLUAは止まらずこちらに向かってくる。
「なっ!」
乱射しているハンドガンの弾が当たるたびにKAHLUAの体力は減っていく。
しかし一発で1ポイントの減少。焼石に水の状態だ。
距離はだんだんと狭まり、至近距離になるとそのまま走りながらJINKを槍で突いてきた。
- JINK
- あまい!
槍の突きをタイミングを見計らって回避し、ジャンプして後ろに回り込んだ。
装備を大剣に変更し、ガラ空きの背中に向かって大きく振りかぶった。
- KAHLUA
- 効かないんだよ!
しかし、すぐに振り返り、槍で突いてくる。
俺はKAHLUAの攻撃を予想し、振りかぶった大剣をおろし、バック転で距離をとる。
KAHLUAの攻撃を寸前で回避した。
- KAHLUA
- この、ちょこまかと!
- JINK
- 悔しかったら当ててみやがれw
KILL°°BE戦で培ったチリも積もれるhit & away作戦がここにきて生きている。
KAHLUAの攻撃モーションは若干遅いため、KILL°°BEの時よりも回避しやすいのだ。
このままいけば初勝利も夢じゃない。
本気で思っていたその時だ。
ーーザクッ
攻撃がヒットした音がスピーカーから聞こえてきた。
3
KAHLUAは遠距離から槍で攻撃をしてきたのだ。
太刀打ちはまるで如意棒みたいに長くなっている。
よく見ると鎖で先には穂がついている。
槍は近距離の武器という印象だったので、鎖で遠距離から突いてくるなんて考えてもいなかった。
- KAHLUA
- 初心者の君だから教えよう
これはチェーンランス
穂が鎖と繋がっているから超遠距離でも攻撃可能な槍なのさ
まさか槍の穂が飛んでくるなんて誰が予想できるだろうか。
装備の存在を知っていたらまだ避けることができたのに。
俺は少し動揺したが、2回ほど大きく深呼吸をして集中を取り戻す。
幸い体力は6ポイントしか減っていない。
こんなの蚊に刺された程度のダメージだ。
- KAHLUA
- ここからいくぞ!
KAHLUAが槍を引くと、鎖に繋がれた穂がヨーヨーみたいに戻っていった。
つづく。