前回まで、
師匠の教え
4
その日から、ORANGE_HEARTさんとの特訓が始まった。
[少年よ!オレンジハートだと長いからオレハでもオレトでもどちらでもいいからな!]
という少しどうでもいい助言をいただいたので、オレハさんと呼ぶことにした。
5
- ORANGE_HEART
- 少年よ!
貴様の攻撃は基礎がなっていない!
まずはパンチ攻撃500発!
PVの画面でオレハさんと向かい合った時に、チャットウィンドウにそう示されていた。
パンチだけ500発って正気の沙汰じゃない。
って思いながらも、コントローラを握りしめパンチのボタンを連打した。
するとオレハさんは猛ダッシュでこちらに向かい、[バッカモーン!]と同時に特大パンチを放ってきた。
「いや、あなたがパンチ500発って言ったんでしょ」という不満を抑えつつも[何するんですか!]と強めの抗議をした。
- ORANGE_HEART
- バカヤロウ!
ちゃんと数えろ!
チャットに表示しろ!
これじゃあ何発目かわからんだろうが!
といかにも不満そうな文章が表示された。
「[これじゃあ何発目かわからんだろうが!]ってオイ、一発づつチャットに入力しろってか!」
パソコン画面に不満をぶつけた。
あまりにも無茶な要求だったのでそのまま感じたことを抗議したのだが、オレハさんに一蹴される。
なんでも、[1発を大切にできないものは1発に泣くものだ!]というのだ。
だからって、1発づつチャットで数えなくてもいいんじゃないか。
そんな文章を打っている最中に、
- ORANGE_HEART
- 嫌なら逃げ出してもいいんだぞ!
と、オレハさんから文章が届いた。
続けて、
- ORANGE_HEART
- やるか!
逃げるか?
どうする!
と俺に問う。
6
- JINK
- わかりましたよ!
やります!
半ばやけになり、やると返事を返した。
確かに[強くなるには覚悟が必要だ!]とオレハさんから言われていたのは事実。
こうなったらやるしかない。
俺は右手をキーボードにおき、左手でコントローラを握り、パンチを入力するごとに、
- JINK
- 1
- JINK
- 2
- JINK
- 3
- 4
と入力していった。
そして、オレハさんは鬼だ。
パンチを500発カウントするだけでも地獄なのに、ことあるごとに邪魔してくるんだもの。
- JINK
- 362
- JINK
- 363
- JINK
- 364
- ORANGE_HEART
- 386
- JINK
- 387
- はい!
1からやり直し! - JINK
- なんでやねん!
こんなふうに、カウントをしている横から数字をぶっこんできたり、[わっ!]といきなり脅かしてきたりとかかなりうざい。
そこで反応したり、カウントを間違えると最初からやり直しなのだ。
- JINK
- いやオレハさん
なんで邪魔するんですか!
これじゃ終わらないですよ - ORANGE_HEART
- 少年よ!
集中力が乱れているから完遂できないのだ!
すべてをパンチ500発に集中させろ!
なるほどね。
オレハさんは集中力を高めるために、ワザと邪魔をしたりしていたのか。
そんな師匠の心意気も知らずに、俺はただやり方に否定的な状態になったわけね。
そうか、俺が悪かったんだな……ってなるかーい!
俺はパンチに全神経を集中力ささて、オレハさんの課題をクリアした。
[どうだまいったか!]
と声高らかにチャットを送ったが、そこにはもうオレハさんはいなかった。
つづく。
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