前回まで、
GINJIの正体
1
- 看護師
- あっ、気づきましたか
DINAは病院のベッドで横になっていた。
どうやらPVに敗北したり、NPCに体力を0にされると強制的に病院に運ばれるみたいだ。
- 看護師
- またケガしたらいつでもくるんだぞっ
俺は看病してくれたであろうNPCの看護師に見送られて病院を後にした。
病院を出ると、あの浴衣のプレイヤーが立っている。
- GINJI
- 面白いものを見せてもらったよw
GINJIから話しかけてきた。初対面のクセに馴れ馴れしい喋り方をしてくる。
- DINA
- あの…あなたと会うの初めてなんですけど
- GINJI
- 何言ってるのさww
- DINA
- 何がですか?
- GINJI
- 俺だよ
- DINA
- 誰ですか?教えてくれないとわからないです
- GINJI
- 本当にわからないのか
- DINA
- 当たり前ですよ
- GINJI
- …永太だよ
- DINA
- えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
パソコンの前で絶叫しながら、律儀にチャットでもリアクションの文章を入力した。
2
- DINA
- 敬語使って損した
- GINJI
- そんなこと言うなよw
- DINA
- なんで教えてくれなかったんだよ。ってかなんで後ろをついてきたんだよ
- GINJI
- いや…なんか面白かったからww
このように俺たちはチャットを使って会話した。だが1つ気になってしょうがないことがある。
GINJIが度々会話の後ろにつけている“w”がなんの意味なのかがわからなかった。
その疑問を解決するために永太、つまりGINJIに聞いてみることにした。
- DINA
- ところでさ、会話の後ろにつけているw←コレってどう言う意味?
- GINJI
- …知りたい?www
また使ったよこの人。絶対ふざけてるに決まってる。
少しイライラしていたが、その気持ちをマネジメントしながら謙虚な感じで、
- DINA
- 教えてください
と送った。
- GINJI
- 話すと長くなるけどそれでもよければw
なんでだよ!“w”1つでそんなに長くなるわけないだろう。
- DINA
- なるべく短くまとめて
- GINJI
- わかったwwwwww
その言葉を最後に、しばらくGINJIは返事をしてくれなかった。
3
しばらくして、GINJIから返信が届いた。
- GINJI
- “w”ってさ元は「ワァオ!!」って驚きの表現の簡略化なんだよね。
だから普通は驚いた時に使うんだけど…ワァオ!!ってテンション上がってる時に使うじゃん。
だから気分が盛り上がってるって意味でも使うんだよ「今テンション上がってます」みたいな感じでさ。
長い文章がチャットウィンドウに表示された。この文章を打つのに時間がかかったのか。
これで“w”の使い方がわかったので試しに使ってみた。
- DINA
- 説明文長っ!w
「説明文長っ!ワァオ!」って意味だよね。
- GINJI
- そうそうwその調子ww
褒められると何だか気分がいい。気分が上がってきた。
- DINA
- うん、使い方はわかったよw
そしたらGINJIはとんでもない事を言ってきた。
- GINJI
- それじゃあさ、あのPEACHって人に話しかけてきなよw
見知らぬプレイヤーに話しかけるというミッションを与えてきたのだ。
- DINA
- なんで?w
- GINJI
- 手に入れた知識は使って身につけるものだよ。それに仲良くなるのもこのゲーム攻略の鍵だ。
- DINA
- ふーんwわかったw
確かにオンラインゲームでは仲間と協力するとクリアしやすいステージもあるので、GINJIの意見に納得してしまった。
俺はこれがチームを組むキッカケになればと思いPEACHってプレイヤーに話しかけたのだ。
4
俺はDINAをゆっくり歩かせて、PEACHの目の前まで移動させた。
何だかコントローラを握っている手が汗ばんでるのがわかる。
どうやら緊張しているらしい。いつもの俺らしくない。
相手は日本に住んでいる以外は名前はもちろん住所も年齢も性別もわからない。
だからこそ怖いと本能で感じているんだと思う。
でもプレイヤーである以上は実在する人であることは間違いない。
DINAとPEACHというキャラクターを通してだけど、人とコミュニケーションを取ることには変わりないから。
だから失礼のないようにしないといけない。
だから緊張するんだ。
そんな事を考えていると、PEACHの目の前まで来てしまった。
「よーし、ここまで来てしまったらもうやるしかない。頑張れ俺、頑張れ俺。」
自分自身に気合を入れた。
「えっと、初対面はやっぱり第一印象が大切だよね。ってことは、暗い人よりも明るい人の方が印象は良いはずだから…」
緊張しながらも、精一杯頭で考えて文章を入力した。さっきの永太との会話に比べると5倍以上時間を使っている。
「よしできた、あとは…」
チャット相手をPEACHに設定し、俺から話しかけた。
- DINA
- こんちはーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
よし、出だしは好調だ。と思ったのだが。
- PEACH
- コ、コンニチハ
文章の雰囲気から消極的な感じが伝わってくる。謙虚な方なのかな。
wもついていないし元気がないだけかもしれない。
元気な会話はまず話題作りからって聞いたことがあったので、このゲームの事について質問することにした。
- DINA
- ねぇねぇ、このゲームを初めて何日目?
最初の勢いが良かったおかげで敬語を使わずに入力できた。
- PEACH
- まだ1週間しか経ってないですよ
- DINA
- へぇーwww
俺も同じでテンション上がったよって意味だよね。きっと相手にも伝わっているはず。
へぇーだけでは寂しいので、感覚を開けずに更に質問をした。
- DINA
- それじゃあレベルはどれくらい上がったの?
- PEACH
- 8まであがりました
- DINA
- へぇーwwww
よし、いいぞ俺。ここまで会話をリードできている。
あとは「仲間になりましょう」その一言で仲間になってくれると思っていた矢先、
- PEACH
- バカにするのやめてください!
PEACHは一言残して足早にその場を去って行ってしまった。怒っていることが文面でも理解できる。
なぜ怒っているのか、俺は全く理解できないでいた。
続く。
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