【第27回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

第26回 空想戦記 -Sky Fliers Online-

期待と重圧

1

中学の思い出は、勉強以外のことは思い出せない。

僕の母さんは絵に描いたようなお受験ママ。

テレビはニュース以外は見せてもらえなかったし、

(というかアニメを見ようとしたらビンタが飛んできた)

テレビゲームもやらせてもらえない。

塾は5つ掛け持ちしているから毎日通い。

土曜日は柔道で体と心を鍛える。

日曜日は休みかと思いきや、家庭教師のお兄さんがついて勉強。

僕に休みなんてなかった。

友達と遊ぶこともしなかったから、僕には友達がいなかった。

話題にはついていけない。

遊びの誘いはいつも断っている。

だから僕への誘いも次第に減っていき、

3年生の頃には0。

友達0の僕が完成したんだ。

2

学校での中間試験や期末試験。

ノルマはいつも全教科98点。

母さんいわく「完璧を目指さないと上には登れないから」との事。

ノルマを達成しなければ晩ごはん抜きで補習。

たがら僕はテストの点数がよくても褒められる事はなかったし、

逆に悪かったら怒鳴られていた。

でも母さんはいつも口癖のように僕に言うんだ。

「私はね、あなたのためを思ってこうしているの。いい高校に入って、いい大学に進学して、大企業に就職して、お金に不自由しない生活を送ってほしいの」

僕が泣き出し、「もうイヤだ!」と叫ぶと決まっていってたセリフみたいなもの。

台本があるかのように一字一句間違うこともなかった。

本当は僕だって、

遊びたいし、

テレビだってみたいし、

友達と呼べる人と笑って話がしたい。

ニコニコ会話をしている友達を遠目に見て、また参考書に目を移し勉強を続ける。

こんな毎日の繰り返し。

ハッキリ言ってツラい。

逃げ出したい。

でも、今ツラいのはこの先、

いい高校に入って、いい大学に進学して、大企業に就職するために大切なことなんだ。

だから今全てを犠牲にしてでも頑張るんだ。

高校受験が終われば一息つく。

春休みでたくさん遊ぼう。

今までできなかった楽しいことを、目いっぱい楽しむんだ。

3

高校受験当日。

自分の席に座る。

コンディションは最悪。

「バナナと牛乳を飲むと頭が冴える」と言われ、信じて食べたら牛乳にあたったみたい。

もうすぐ受験が始まる。

もう席を立てない。

僕は腹痛を我慢しながら受験を受ける決意をした。

1時限目『国語』。

腹痛が僕を攻撃してくるが、幸い我慢できないわけではなかった。

このまま一気に解答して、トイレに駆け込めばいいと考えていた。

だが、現実は甘くない。

試験開始10分で、腹痛の波がピークに達して我慢できなくなった。

僕は試験中にも関わらず勢いよく席を立ち、何も言わずに駆け足でトイレに向かった。

…最悪だ。何もかも最悪だ。

便座に座りながら、頭を抱えてうなだれている。

その後の記憶はほとんど覚えてない。

ただ一つだけ言えるなら、

残りの教科も、実力を出し切ったとは言えない。

「取り返しのつかないことをした、もうおしまいだ」

頭の中を絶望がループし、集中力なんで少しもなかった。

この後母さんになんて怒られるか、罰を受けるのか、

ただ保身のための言い訳を考えたり、失敗した自分を否定したり。

とにかく試験どころではなかった。

3日後、入試の結果が届けられた。

母さんがニコニコしながら封書を開け、中に入っている紙を確認した。

瞬間、太陽のように笑顔だった母さんの顔が鬼の形相になったことは言うまでもなく、

すでに落胆していた僕の頬に思いっきりビンタした。

「アンタねぇ、なんでこんなところで躓いてるの!アンタの実力なら間違いなく東高にトップで受かっているはずなのに!なんでできないかなぁこのバカ!」

左手に東高の通知をヒラヒラさせながら何度も何度もビンタをする母さん。

僕はただ涙を流しながら耐えることしかできなかった。

赤く腫れた左の頬は痛みの感覚なんてなくなってる。

それよりも、

「よくここまで頑張ったね、ゆっくり休んでね」

と優しい言葉を期待していた。

その言葉を裏切られた事がショックだった。

友達もいない。

母にも頼れない。

受験にも失敗。

だから僕は悟った。

努力したって報われない。

どうせツラい思いをするなら最初から頑張らない方がいい。

死に物狂いで頑張ったって、結局は報われないんだから。

4

その日の夜。

いつも鳴らない携帯電話が突然鳴り出した。

僕の父さんからだ。

小学生の頃に離婚してから会っていないけど定期的に連絡をくれる。

中学の3年間は勉強でほとんど無視していたのだけれど、今日はすぐに出た。

『もしもし、永太ひさしぶり』

受話器の向こうからは優しい父さんの声が聞こえる。

「あっ、もしもし…その」

『受験はどうだった?』

「えっ…」

言葉に詰まった。

東高を受験して落ちましたって自分からは言えなかったからだ。

それを察したのか父さんから、

『受験、落ちたのか』

といわれ。

恐怖しながらも

「…うん」

と一言だけ返した。

『まぁ母さんのプレッシャーに耐えながらよくやったよ本当。受からなかったのは残念だがお疲れさま。』

僕の目はまた涙でいっぱいになっていた。

続く。

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。