前回まで、
安全地帯
1
今日も相変わらずゲームにログインしている。
SID、MOMOKO、BINGO!!さんの姿はなく、俺とGINJIの2人だけだった。
- GINJI
- 今日は散々な1日だったなww
- DINA
- ホントさ、あの後ずっと耳が痛かったんだからさ!
- GINJI
- 色んな意味でなww
- DINA
- どういう意味だよwww
- GINJI
- wwww
最近は、ゲームにログインしたらすぐに今日の出来事を話している。
学校とかで話せばいいのにとかは言わないで。
面と向かって会話するよりも、チャットの方が色んなことを本音で話せるんだよね。
もちろんGINJIだけじゃなくて、名前も知らないMOMOKOやSIDやBINGO!!さんにも、包み隠さず本音を言えるんだ。
俺の意見に対して共感してくれたり、理解してくれたら嬉しい気分になるしね。
『俺のことわかってくれるんだ』ってね。
文章だけだけど、画面の向こうには誰かがいて、普段と同じように会話をしている。
だから、オンラインゲームは楽しい。
年齢も、身長も、何もかも関係なく、老若男女誰とでも話ができる。
本気でオンラインゲームの世界に浸っていたいんだ。
- DINA
- しばらく待ってみたけど、
今日は誰もログインしないんだね - GINJI
- あぁ、そうみたいだな
- DINA
- それじゃあ、今日はKILL°°BEの情報収集といこうか
俺はKILL°°BEの情報収集を提案した。
次の敵はKILL°°BEだと確信したが、なんせ情報が少なすぎる。
ついでにTeam Xの情報も入手できるかもしれないし。
いつかTeam Xを壊滅させれば、俺たちはこのゲームで正義のヒーローになれる。
そんなことを夢見てた。
- GINJI
- そんなことよりさ
GINJIの返答に、思わずズッコケてしまった。
体制を立て直して[そんなことよりって、他にやることあったっけ?]と返答。
見落としている何かがあったのかと感じ、真剣になって聞き返した俺にGINJIは、
[レ ベ ル 上 げ な よ]
と言い放って立ち去った。
2
レベル上げを指示されたので、ステージ森でレベルを上げている。
しかし、このレベル上げが地味で大変な作業だったりする。
1時間ほど経過してたくさんのモンスターを倒した。
感覚的には200は超えているんじゃないかな。
でも、1しか上がらない。
「こ、これは大変だなぁ」
両手の親指が痛くなってきた。
画面を凝視しているから目も乾燥してきた気がする。
なんだかDINAよりも自分自身のダメージが大きいような気がするのだが。
(少し休憩しよう)
これ以上プレイするのは健康上よくないと判断し、安全地帯に移動した。
このゲームには、各ステージに安全地帯が設けられている。
イメージは砂漠のオアシスみたいなものだ。
安全地帯ではモンスターとの戦闘だけでなく、プレイヤー同士対戦するPVもできない。
体力が少なくなって死にそうな時は安全地帯に入って休戦し、体力を回復させることが大事になってくる。
「この辺りにしよう」
安全地帯を探索し、木陰を見つけたのでそこにDINAを座らせた。
体力が回復するのを確認し、俺は自分のベッドに向かおうとした時だった。
ダッシュでコチラに向かい、座っているDINAの目の前で立ち止まり、
[オイ!!!!!!!!]
って話しかけてきたんだ。
3
DINAに話しかけてきているのは明らかだった。
「!」の多さから相当お怒りの様子。
しかし、状況が理解できなかったので怒っていると思われるそいつに聞いてみることにした。
椅子に再度座り、マウスのポインタを合わせてキャラクターを確認する。
名前はSEVEN。
髪は赤のポニーテールで左目には黒の眼帯をつけている。
鎧をまとっていて、見た目は戦国時代の女侍って感じ。
- DINA
- いきなりオイって言われましても、
何か悪いことでもしましたか?
俺は恐る恐るSEVENさんにきいた。
- SEVEN
- 当たり前田の慶次郎!
俺の予想してなかった返事だったので、
[は?]
と無意識に返した。
- SEVEN
- なに!?
お主『前田慶次』を知らぬのか?
(誰だよ前田慶次って。慶次郎なのか慶次なのかどっちなんだよ!)
ググってみると戦国武将のようだ。
キセルは熱いらしい。
とりあえず戦国武将だということは理解できた。
- DINA
- はっ!前田刑事だと!
当然知ってるさ!
ついでにキセルは熱いんだぞ! - SEVEN
- お主、字が間違っているであろう、慶次だ
- DINA
- うるさい!とにかく前田はあれだ、お殿様なんだろ!
とのモードになるって書いてあったし - SEVEN
- お主どこから情報を仕入れたwバカかww
- DINA
- バカじゃない!ちょっとおつむが弱いだけなんだ!
- SEVEN
- それを世間一般ではバカというのだw
ふと我に帰って思った。
俺たちは『前田慶次』について議論しているのではないと。
続く。
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