前回まで、
いざ洞窟へ
1
- DINA
- よし着いた
ここにKARASがいる!
着いたのは洞窟。
装備の準備をして入ろうとしたその時、MOMOKOが質問してきた。
- MOMOKO
- あの、DINAくん
- DINA
- なに?
- MOMOKO
- KARASが今ログインしているとは限らないんじゃない?
KARASはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)ではなくプレイヤーだ。
ゲームにログインするもしないも本人次第。
だが、確信があるんだ。
- DINA
- 確かにログインしてないかもしれない
だけど掲示板に、『ここ最近無差別にPVを仕掛けてくるプレイヤーがいる』って書かれていたんだ
KARASか『Team X』の誰かなのは確かだと思う - MOMOKO
- なるほどねー^ ^
- DINA
- しかも今日に限ってはKARASが直接書き込んだみたいなんだ
『イライラするから洞窟にいる奴らに宣戦布告だ』って - MOMOKO
- そーなんだー
MOMOKOはびっくりしたようだ。
- MOMOKO
- でもなんでしーちゃんとかに教えなかったんですか?
- DINA
- そ、それは
痛いところを突かれた。
2
確かに、情報はメンバー善逸で共有するべきだった。
だが、伝えられない理由があった。
- DINA
- えっと、みんなが解散したあとに掲示板見たから伝えられなくて^^;
言い訳しているみたい。実際言い訳だけど。
こんな言い訳みたいな言い方ってあまり好きじゃない。
男らしくないし、女々しいって感じがする。
- SID
- 伝えなくても来てやったぞw
なんか威張った文章は、やっぱりSIDだった。
いつの間にかDINAの背後に立っていた。
- MOMOKO
- あれれ、しーちゃん^ ^なんでここがわかったのー?
- SID
- 掲示板を見てここに来た
さすがはSID。このゲーム歴が長いだけあって要領がいい。
- DINA
- あれ、しーちゃんBINGO!!さんは?
SIDにBINGO!!さんの行方をきいてみた。
すぐに解散したとはいえ、方向が同じだったからどこに行ったかを確認するために。
そして、どさくさに紛れて『しーちゃん』を使ってみた。
- SID
- BINGO!!さんにも伝えたのだが、『これは罠だ!』って洞窟とは反対方向に走っていったw
BINGOさんとは別行動になったらしい。確かに罠という可能性も否定できない。
普通に答えてくれたところをみると、しーちゃんには気づいていないみたいだ。
- SID
- しーちゃんはヤメロ(−_−#)
あ、やっぱりバレてたのね。
- MOMOKO
- わかったーやめるー(T_TT)
MOMOKOが泣いていた。
どうやらSIDの言葉が、MOMOKOに向けられてると勘違いしたみたい。
動揺しているのか、泣いている顔を表すTがひとつ多い。これじゃ三つ目だよ。
SIDは必死に[あっ、DINAに言ったの!]とフォローしていた。MOMOKOとはリア友だからか必死なのが画面越しでも伝わってくる。
あまりにも対応が違ったので[俺にも慰めてくれてもいいんだよw]とアピールしたのだが、
- SID
- とにかく洞窟にむかうぞ
と、俺の発言をまるっと無視したのだ。
そしてMOMOKOと2人で洞窟に入っていく。
俺はチャットの機能を叫ぶモードに切り替えて[リーダーは俺だ!]と叫んだ。
3
洞窟に入るとすぐに違和感を覚えた。
俺たちの他にもたくさんプレイヤーがいるはずなのに見当たらない。
やはりKARASの宣戦布告を見て逃げ出したのか、それとも…。
- SID
- …静かだな
- MOMOKO
- うん、なんか君が悪いね
- DINA
- まぁ掲示板に宣戦布告なんか書かれていたら誰だって逃げるさ
- MOMOKO
- そうだよね^ ^;ここってDINA君みたいなレベルの低い人中心に集まるもんねw
MOMOKOにレベルの低いと言われて軽くショック。
SIDとは違って物腰柔らかい文章だが、逆にグサッと心に刺さってしまう。
弱いってストレートに言ってくれた方がまだ笑いになるんだけどな。
だから、[俺は弱くない!]って強がってみた。
- SID
- もう少し奥に言ってみようか
- MOMOKO
- そうだね^ ^もしかしたら潜んでいるかもしれないしねー
華麗にスルーされたのさ。
- DINA
- おい!俺を無視するなー!
- SID
- なんか叫ぶモードで叫んでるよww
- MOMOKO
- おもしろ〜いね〜ww^ ^
2人は気にもとめずに洞窟の奥へと進んだ。
- DINA
- いやいやw置いてかないでよw KARAS捜索のためにみんなで固まって行動しようよ!
急いで2人を追いかけるのだが、ペースが早くてなかなか追いつくことができない。
画面の左端にSIDとMOMOKOで右端が俺。
物理的に離れているけど、そのまま心の距離に思えてしまうんだ。気のせいかもしれないけど。
4
- DINA
- や、やっと追いついた
2人が止まってくれたおかげで何とか追いつくことができた。
まぁホッとしたのも束の間。
SIDが[KARASを発見した]とメッセージを発したので前方を確認。
すると確かにKARASがいた。
しかしどこか様子が変だ。
少なくとも初めてあった時の冷静で強いという印象はない。
- KARAS
- なぜだ、なぜ皆いないのだ
- KARAS
- あいつが切り捨てた恨みをぶつけようと思ったのだが
- KARAS
- そうか、俺から逃げているのか…面白いw
- KARAS
- なぜうまくいかないんだ!
こんな感じでずっと独り言を発している。
例えるなら死にかけた落武者みたい。
KARASはまだ俺たちに気がついていないみたい。
- SID
- よし、KARASは私が戦ってくる
- DINA
- ちょっと待て、勝手に決めるなよ!
- SID
- だが、KARASと対抗できるのは私しかいない
2人が向かっても無駄死にするだけだ - DINA
- だからって、やってみなきゃわからないだろ!
俺はKARASにリベンジしたかった。
確かにレベルは低いかもしれない。
でも万が一、いや億が一でも勝てる可能性はあるんだ。
このままやられたままってのも嫌だし。
- SID
- 私にはKARASに聞きたいことがあるんだ、だから私にやらせてくれm(_ _)m
SIDはその場に座り頭を下げた。
ご丁寧に土下座の顔文字も添えられた。
勝手に決めたのは正直面白くないけど、SIDにも譲れないものがあるみたい。
少し考えた結果、
- DINA
- わかった
そのかわり、勝てよ
SIDを信じることにした。
[…ありがとう]と一言だけ残し、KARASに向かって走り出した。
5
- DINA
- クソッ…
- MOMOKO
- DINA君落ち込まないで^ ^;
私たちにはまだやることが残ってるのよ
MOMOKOの一言で目が覚めた。
そうだ、まだやるべきことが残ってる。
ITOSHIKIのいっていた、
『KARASに会ったらメニューを開け』
今それを実行するときだ。
DINAをクリックし、メニューを開いた。
画面にはDINAの状態、装備品、今いる場所のマップやお友達のログイン状態が表示された。
「この中に、何か重大なことが……えっ!」
違和感はすぐにわかった。
だけどこれ…いや、これは嘘なんだと、また大声あげてベッドから飛び起きて『全部夢でした』と叫びたくなる。
口を押さえて溢れ出す感情を抑えるのに精一杯だった。
違和感があったのは『お友達のログイン状態』だ。
登録したプレイヤーのログイン状態と使用キャラクターがわかるようになっている。
俺はまだゲームをプレイして日数が経っていないので、お友達はチーム⭐︎ダイナ(仮)のメンバーだけ。
SID、MOMOKO、BINGO!!さん、そしてGINJIの4人。
のハズだが、メンバーの中にGINJIの姿はない。
代わりに登録されていたのが、
KARAS
だった。
続く。
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