【第41回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

第40回 空想戦記 -Sky Fliers Online-

オフ会

7

「あっ!使用キャラ言うの忘れてた」

奈々さんは照れ隠しで舌をペロッと出した。

いわゆるテヘペロってやつだ。

この人は高校生相手にどこまで可愛かぶるんだろうか。

「それじゃクイズ形式にするのはどうかな?面白そう」

カナタは手を挙げて提案した。

「いいね〜」

俺を含めてみんな賛成のようだ。

「それじゃまずDINAから、この人って思った人を指さしてね」

カナタの仕切りで始まったクイズ。

まずはDINA、俺のキャラだ。

まぁ自分で自分を指さすのはカッコ悪いからここはあえて永太を指さすことにした。

「準備はいい?せーのっ!」

カナタの掛け声でみんな一斉に指をさした

指はすべて俺の方を向いていた。

ただ俺だけ永太の方を指していた。これはこれでむなしい。

「ちょ!なんでみんな指差すの」

「だってあのバカさ加減がバカハジメにそっくりなんだもん」

「ハジメ君の性格そのまま出てたから……」

カナタも梢ちゃんも俺のことバカだからとでも言いたいんだろう。

軽くショックだよ。軽くだけどね。

「それじゃ自動的にGINJIは永太くんって事になるわね」

「そうだね」

ワンチャン『ネカマを期待』したのだが、さすがに期待通りにはならなかった。

ってか、永太が俺のこと差したら俺がDINAってことバレバレじゃんか。

「じゃあ次はSEVENだね、せーのっ!」

掛け声と同時にみんな一斉に奈々さんを指差す。

奈々さんはカナタを指差した。

「うっそ〜!なんでわかったの!?」

奈々さんは目を丸くして驚いた表情を見せた。

「だってSEVENって名前は、奈々さんの7って数字を英語読みしたからですよね?だからかなって思って」

永太の説明に俺を含めてみんなが首を縦に振った。

「あっ、やっぱりバレてた?」

奈々さんはまたテヘペロの表情をした。

「残りはMOMOKOとSIDだね!まずはMOMOKOから」

8

「あっ、カナちゃんと梢ちゃんはお互いにキャラわかっているから、俺と肇と奈々さんの3人で予想しませ ん?」

カナタの進行を遮り、永太が提案をしたのだ。

「そうだな」

「いいよー、絶対当ててやるんだから」

俺も奈々さんも永太の提案に賛成だ。

しかし答えが簡単すぎる。

カナタがSID。

梢ちゃんがMOMOKO。

この解答を導くのは掌をかえすより簡単なことだと思っていた。

結局「みんなキャラに性格がてでるよね」って結論で締めるんだよね。

「予想できたよ」

俺の掛け声につられて永太と奈々さんも「予想したよー」と発した。

みんな準備はできたみたいだ。

「したらMOMOKOはどーっちだ!せーのっ!」

カナタの掛け声で俺たちは一斉に梢ちゃんを指差した。

だが、梢ちゃんは顔をうつむきながら、

「…ちがいます」

と小さな声で否定した。

「もぉーみんなして失礼ね!私がMOMOKOなのにー」

カナタがキレていた。

「えっ!カナタがMOMOKOなん!?」

まさかの寝耳に水で反射的に聞き返してしまった。

「なによ悪い!?」

カナタはものすごく不機嫌だ。

当たらなかったことがそんなに不満だったのか。

「ってことは…」

そう、サプライズはこれだけではなかった。

顔をうつむきながら、とても申し訳なさそうに手を挙げて、

「…SIDは、私です」

と、呟くように答えた。

「えぇぇぇー!」

永太、奈々さん、そして俺。

まるでタイミングを図ったかのように一斉に叫んだ。

9

あれから、「とりあえずカラオケ始めちゃおうか」という奈々さんの提案で、カラオケを歌うことになった。

だがそれが意外と楽しい。

カナタと梢ちゃん。かなり歌が上手い。

永太は、アニソンを歌っていた。

奈々さんはそんな俺たちの歌を、脚を組みながら聴いていた。

まぁなんだかんだいっても、オフ会は予想以上に盛り上がった。

だが、そんな楽しいオフ会の中で1人悩んでる男がいる。

俺だ。

SIDが梢ちゃんでMOMOKOがカナタというのが、まだ納得いってなかったんだ。

(カナタがMOMOKOで梢ちゃんがSID?いや絶対違うんじゃない。だってSIDはカナタに近いいじり方するよ。MOMOKOはもの静か…ではないけどなんとなく優しそうな雰囲気あるし。もうわからん!)

と一人で迷宮をさまよっているときに永太が話しかけてきた。

「なんか悩んでいるみたいだな」

どうやら俺の状況を察したらしい。

「あぁ、今考えてみても絶対SIDはカナタだと思うんだよ」

「なんだそんなことか」

あっさりとした返しに俺はカチンときた。

「そんなことじゃねぇよ、こっちは頭の中ごちゃごちゃになってるんだよ!」

そうさ、もはやパニック状態さ。

「まぁまぁ細かいことはきにするなって、2人とも嘘はついてないと思うし」

永太がそういうと、JUDY AND MARYのOver Driveを2人で仲良く歌っているカナタと梢ちゃんを見て、

「きっと憧れなんだよ」

とゆっくりとした口調で言った。

10

「あこがれ?」

ますます理解に困った。

「そう憧れ。」

「誰だって理想のひとつやふたつはあるものさ。『もっとこうなりたい』とか『芸能人のあの人みたいに』とかさ。カナちゃんと梢ちゃんは憧れをMOMOKOとSIDに投影して演じていた。それだけのことだよ」

「ふぅん、わざわざ演じなくても現実で憧れに近づくように行動すればいいのに」

ゲームの中で理想に近づいても何も変わらないという、どこか冷めた感情が隣にいた。

「俺もそうだけど、ゲームっていう『仮面』をかぶることで表現できることもあるのさ。いつもと違う自分ってやつかな」

「そうなのか?俺にはよくわからないが……」

「ほら、車に乗ったら性格変わ…」

「なに2人で話してるのさ、次はハジメの番だよ」

カナタは永太の言葉を遮り、マイクを俺に渡してきた。

「お、おうサンキュー」

「…ハジメ君って何歌うの?」

タブレットで曲を検索しているときに、梢ちゃんがピョコっと覗き込んできた。

俺は曲を予約して画面を見せた。

「紅」

「すごいね、あれキー高いでしょ」

「いやぁ裏声で歌ったらそこまで難しくないよ」

照れ隠しに頭をポリポリかいた。

その純粋で少女のような笑顔がとても可愛かったんだ。

「よーし、いくぞー!」

こうして俺たちは夜10時まで歌王でカラオケを堪能した。

帰り際、メンバー同士で連絡先を交換してオフ会は無事終わりを迎えた。

続く。

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。