前回まで、
Think about it
1
深夜2時。
俺はある人をさがしている。
昼間にはまったく姿を見せないあの人。
多分、深夜に出没するとみてさがしている。
次の日も学校がある。
俺は『徹夜で残業している会社員か!』と心でツッコミを入れながら、
目を擦り、ブラックコーヒーを一気に飲んだ。
しかし見つからない。
「ったく、どこにいるんだよ」
どこをさがしてもみつからない
今日はログインしてないんだろうかと半ば諦めモードでさがしていたその時だ。
- ITOSHIKI
- さがしているのは、私か?
チャットと同時にITOSHIKIが現れた。
- DINA
- あぁ、さがしたよITOSHIKI
2
- ITOSHIKI
- で、なんの用だ
ITROSHIKIに会いたかった理由は、
- DINA
- スカルダがどこにいるか教えてほしい
その一点。
- ITOSHIKI
- なぜ私に聞くのだ
- DINA
- ITOSHIKIはサービス開始当初からこのゲームにログインしていただろう
だからスカルダのことだってわかるはず - ITOSHIKI
- わかるわけないだろう
NPCなら教えることが可能だが、ログインしている人のことなど知るわけがない
ITOSHIKIは呆れているようにも見える。
- DINA
- …ダメか
俺のテンションもガタ落ちだ。
ITOSHIKIならきっとスカルダの居場所がわかると思ったのだけれど見当違いだったみたい。
計画が丸潰れさ。
- ITOSHIKI
- 一つ聞きたい
- DINA
- なんだ?
- ITOSHIKI
- SKULDAをさがしてどうするつもりだ?
今度はITOSHIKIが問いかけていた。
俺は怯むことなく答えた。
- DINA
- 『あの事件』のことについて色々と聞いてみる
- ITOSHIKI
- DOLPHIN事件か
重要なことは伏せたつもりだが、すぐにバレてしまった。
いや、とても有名な事件なのだろう。
- DINA
- さっきまでググって調べたんだ
自信満々に答えることができたのは、まとめサイトに書かれていたことが全て真実だと思ったから。
- ITOSHIKI
- お前はDOLPHIN事件を知って何を感じたんだ?
3
- DINA
- それは、
スカルダがチートして、DOLPHINが消されて事件が解決したと思ったけど - ITOSHIKI
- 事件は解決した、かwwww
この『w』は明らかに馬鹿にするような使い方だった。
怒りでキーボードを強めに叩く。
- DINA
- 馬鹿にするな!
- ITOSHIKI
- すまないw
ただ、お前は『本当のこと』を知らないんだなと - DINA
- 本当のこと?
- ITOSHIKI
- こちらから質問するが、
DOLPHINが消されたのに、
なぜまだKILL°°BEが存在しているんだ? - DINA
- えっ、なぜって、、、、
- ITOSHIKI
- やっぱり
お前はわかった気でいるだけの
知ったかぶりなんだなww
今日はなんだかITOSHIKIに馬鹿にされてばかりのような気がする。
深夜だからか気持ちにも余裕がない。
- DINA
- なんだよ!馬鹿にした態度取らないで真実を教えてくれよ!
- ITOSHIKI
- ダメだ
- DINA
- なんだよ!ケチ!
- ITOSHIKI
- 黙れ!
甘えるな!
お前は1人では何もできないのか!
そんな甘い考えを持っている貴様が
強くなるなんて1000%不可能なんだよ!
ITOSHIKIの語気は相当強い。
文章だけでも迫力があり、頬をビンタされたような感覚になる。
ITOSHIKIから詳細を聞き出そうとしてたのは本当だし、それが一番の近道だと感じたから説教された気持ちだ。
俺は甘えていたのかもしれない。
どうやって返信しようか考えていたが、いい言葉が思いつかない。
もたもたしているうちに、ITOSHIKIから返信が来た。
- ITOSHIKI
- 考えろ
自分の力で考えろ!
疑うものと信じるもの
自力での取捨選択は難しいかもしれない - ITOASHIKI
- だが、与えられた情報だけを鵜呑みしていたら
真実にはいくら頑張っても近づけないんだ
自身で考えてこそ真実に近づける
自分自身で考えるんだ
この文章がチャットウィンドウに表示されると同時に、ITOSHIKIはログアウトしてしまった。
結局真実はわからないままだ。
俺もチャットの文章を読んだ後、眠気の限界が訪れ、
キーボードに倒れこみ、そのまま夢の中へログインした。
次の日、遅刻して怒られたことはいうまでもない。
続く。
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