前回まで、
ゲームスタート
1
(よしッ、これで完璧だ)
俺はゲームをダウンロードを完了し、タイトルが映っているパソコンのディスプレイを眺め、どこか達成感に満ち溢れていた。
結局永太のメモは、途中で作業がわからなくなって確認した。
作業している時は何度も永太に『ありがとう』とお礼の言葉を伝えた。
まぁ心の中でだけどな。
(にしても、まさかあんな事になるとは思わなかったよ…)
カナタが叫んだ後、俺はクラスのみんなに白い目で見られた。
必死になって弁解したが、誤解は解けているのか不安だ。
俺は、パソコンの前で俯きなら、
「あぁ…絶対クラスのみんなにヘンタイだと思われてるよ…カナタ殺す!絶対殺す!!」
と呟いた。
この瞬間はカナタに殺意を感じるのだが、いつものことだからすぐ消えるのさ。
そんな事よりも今はオンラインゲームで頭がいっぱいだった。
まるで遠足に行く前日のようなワクワク感に満ちている。
ポインタを『スタート』と書いているカーソルにあわせ てクリックした。
(ここから俺の野望が始まる。)
そんなことを考えたらますます心が弾んできた。
2
スタートボタンを押すと、
- はじめに、あなたの『プレイヤーキャラクター』を設定してください。
と画面に表示された。
俺は画面に表示されている説明を見ながら自分のキャラクターを作り出した。
攻撃力や守備力などのパラメーター配分、キャラクターの格好、性別や得意武器など決める部分が多くて大変だった。
大変だけど、これから自分の分身が、
戦い、街を救い、時には相手プレイヤーと対峙し勝利する。
このゲームSky Fliers Onlineという世界を駆け巡り、
活躍する姿を想像しているから楽しいんだ。
やっとの思いで、俺のキャラクターは完成した。
時計を見るともう始めてから1時間半も経っていた。
夢中になると時間の感覚がわからなくなるものなんだな。
そんな俺のキャラクターの特徴は
タイプ:攻撃型
得意武器(メインジョブ)大剣
の超攻撃型タイプで、見た目は中世ヨーロッパの騎士みたいな感じだ。
キャラクターが出来上がって、ENTERキーを押すと、次の画面に進んで、
- 最後に尋ねます。あなたの『名前』を教えてください。
と指示を受けた。
「うーん…名前ねぇ…」
俺は腕を組みながらそのまま椅子の背もたれによしかかった。
普段の時はたくさんの案が浮かんでくるのだが、いざ考えろと指示を受けるとなかなか出てこないのだ。
「まぁ…ヨーロッパの騎士みたいな格好だし、『アーサー』でいいか」
安易だけど、見た目からイメージするのは大事だから、アーサーに決めた。
ただ、名前に使える文字が英数字と記号しかなかったので、どうせならカッコよく英語にすることに。
そして、俺が入力した名前は
AASAA
だった。
「いくぞアーサー! 俺たちの伝説はここから始まるんだ!」
気持ちが高揚し勢いそのままに、俺の人差し指はEnterキーを押したのだ。
すると…
- この名前はすでに使用されています。
というエラーが出てきた。
「ま、まぁあの有名なアーサーだもんな、そりゃ名前だって使うわな」
気を取り直してもう一度名前をつけてみた。
「これでどうだ」
我ながら素晴らしい発想を思いつき、新たに着けた名前は…
AASAA2
だった。
「ふっふっふ、後ろに2を付けてしまえば同じ名前にはならない」
そして再びENTERキーを押す。
- この名前はすでに使用されています。
「何だと!?俺と同じ考えのヤツがいただと! クソッ、俺は負けんぞぉ!!」
それからは、俺とゲームの対決だった。
AASAA3
AASAA4
AASAA5
AASAA6
AASAA7
AASAA8
しかし結果は…
- この名前はすでに使用されています。
俺の負け。
さすがに激しく落ち込んだ。
それと同時にこのゲームには『AASAA』 という名前のキャラクターが少なくとも8人いることはわかった。
ということで、ようやく別のキャラクター名を考えるようにした。
3
新しく名前を考えるために、本棚に埃をかぶって眠っている英和・和英辞典を取りだしページめくった。
そこで、驚愕の事実が発覚する。
アーサー(arthur)
なんとアーサーのスペルが、間違っていたのである。
自分自身の英語力を自画自賛していた俺が恥ずかしい。
だってアーサーを
AASAA
と思っていたのだから。
名前を受理されなくて本当に良かったと思う。
念のため『ARTHUR』で登録しようと試みたが、
- この名前はすでに使用されています。
エラーが出てきたのは言うまでもない。
もしやあの“8人のAASAA”は先に登録されていたARTHURの怨念だったのだろうか。
そんなこと考えていても仕方がない。
「やっぱり、違う名前を考えよう」
俺は辞書をパラパラとめくった。
すると、1つの単語に注目した。
恐竜(dinosaur)
という単語。
なんかダイナソーという響きがカッコいい。そんな単純な理由で惹かれた。
ただ『ダイナソー』はもう登録していると予想、俺なりのアレンジを加えて、
DINA
と入力した。
恐る恐るEnterキーを押すと…
- “DINA”いい名前ですね。
登録完了のメッセージが表示されていた。
続く。
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