【第4回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

ゲームスタート

1

(よしッ、これで完璧だ)

俺はゲームをダウンロードを完了し、タイトルが映っているパソコンのディスプレイを眺め、どこか達成感に満ち溢れていた。

結局永太のメモは、途中で作業がわからなくなって確認した。

作業している時は何度も永太に『ありがとう』とお礼の言葉を伝えた。

まぁ心の中でだけどな。

(にしても、まさかあんな事になるとは思わなかったよ…)

カナタが叫んだ後、俺はクラスのみんなに白い目で見られた。

必死になって弁解したが、誤解は解けているのか不安だ。

俺は、パソコンの前で俯きなら、

「あぁ…絶対クラスのみんなにヘンタイだと思われてるよ…カナタ殺す!絶対殺す!!」

と呟いた。

この瞬間はカナタに殺意を感じるのだが、いつものことだからすぐ消えるのさ。

そんな事よりも今はオンラインゲームで頭がいっぱいだった。

まるで遠足に行く前日のようなワクワク感に満ちている。

ポインタを『スタート』と書いているカーソルにあわせ てクリックした。

(ここから俺の野望が始まる。)

そんなことを考えたらますます心が弾んできた。

2

スタートボタンを押すと、

はじめに、あなたの『プレイヤーキャラクター』を設定してください。

と画面に表示された。

俺は画面に表示されている説明を見ながら自分のキャラクターを作り出した。

攻撃力や守備力などのパラメーター配分、キャラクターの格好、性別や得意武器など決める部分が多くて大変だった。

大変だけど、これから自分の分身が、

戦い、街を救い、時には相手プレイヤーと対峙し勝利する。

このゲームSky Fliers Onlineという世界を駆け巡り、

活躍する姿を想像しているから楽しいんだ。

やっとの思いで、俺のキャラクターは完成した。

時計を見るともう始めてから1時間半も経っていた。

夢中になると時間の感覚がわからなくなるものなんだな。

そんな俺のキャラクターの特徴は

タイプ:攻撃型

得意武器(メインジョブ)大剣

の超攻撃型タイプで、見た目は中世ヨーロッパの騎士みたいな感じだ。

キャラクターが出来上がって、ENTERキーを押すと、次の画面に進んで、

最後に尋ねます。あなたの『名前』を教えてください。

と指示を受けた。

「うーん…名前ねぇ…」

俺は腕を組みながらそのまま椅子の背もたれによしかかった。

普段の時はたくさんの案が浮かんでくるのだが、いざ考えろと指示を受けるとなかなか出てこないのだ。

「まぁ…ヨーロッパの騎士みたいな格好だし、『アーサー』でいいか」

安易だけど、見た目からイメージするのは大事だから、アーサーに決めた。

ただ、名前に使える文字が英数字と記号しかなかったので、どうせならカッコよく英語にすることに。

そして、俺が入力した名前は

AASAA

だった。

「いくぞアーサー! 俺たちの伝説はここから始まるんだ!」

気持ちが高揚し勢いそのままに、俺の人差し指はEnterキーを押したのだ。

すると…

この名前はすでに使用されています。

というエラーが出てきた。

「ま、まぁあの有名なアーサーだもんな、そりゃ名前だって使うわな」

気を取り直してもう一度名前をつけてみた。

「これでどうだ」

我ながら素晴らしい発想を思いつき、新たに着けた名前は…

AASAA2

だった。

「ふっふっふ、後ろに2を付けてしまえば同じ名前にはならない」

そして再びENTERキーを押す。

この名前はすでに使用されています。

「何だと!?俺と同じ考えのヤツがいただと! クソッ、俺は負けんぞぉ!!」

それからは、俺とゲームの対決だった。

AASAA3

AASAA4

AASAA5

AASAA6

AASAA7

AASAA8

しかし結果は…

この名前はすでに使用されています。

俺の負け。

さすがに激しく落ち込んだ。

それと同時にこのゲームには『AASAA』 という名前のキャラクターが少なくとも8人いることはわかった。

ということで、ようやく別のキャラクター名を考えるようにした。

3

新しく名前を考えるために、本棚に埃をかぶって眠っている英和・和英辞典を取りだしページめくった。

そこで、驚愕の事実が発覚する。

アーサー(arthur)

なんとアーサーのスペルが、間違っていたのである。

自分自身の英語力を自画自賛していた俺が恥ずかしい。

だってアーサーを

AASAA

と思っていたのだから。

名前を受理されなくて本当に良かったと思う。

念のため『ARTHUR』で登録しようと試みたが、

この名前はすでに使用されています。

エラーが出てきたのは言うまでもない。

もしやあの“8人のAASAA”は先に登録されていたARTHURの怨念だったのだろうか。

そんなこと考えていても仕方がない。

「やっぱり、違う名前を考えよう」

俺は辞書をパラパラとめくった。

すると、1つの単語に注目した。

恐竜(dinosaur)

という単語。

なんかダイナソーという響きがカッコいい。そんな単純な理由で惹かれた。

ただ『ダイナソー』はもう登録していると予想、俺なりのアレンジを加えて、

DINA

と入力した。

恐る恐るEnterキーを押すと…

“DINA”いい名前ですね。

登録完了のメッセージが表示されていた。

続く。

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。