前回まで、
NATSUHAの目的
4
- NATSUHA
- なんだと
もう一度行ってみろ
NATSUHAの言葉が変わった。
明らかに怒っている様子だ。
画面越しに伝わってくる怒りに恐怖さえ覚えた。
心臓はバクバクと激しく動き、口の中は砂漠のようにカラカラに。
だけど、意を決してキーボードを叩いた
- NATSUHA
- NATSUHAのやっていることは犯罪以外のなんでもないんだよ!
このゲームを支配しようとしている悪でしかない
神とか言ってるんじゃねーよ!!
文章を書いた後、Enterキーをグーで思いっきり叩いてしまった。
いや、殴ったといった方がいいだろうか。
それほど頭に血が昇っていたから。
自分のやっていることを正当化しようとしていたNATSUHAにイライラしていた。
もしNATSUHAよりも強かったら、絶対に成敗していたに違いない。
- NATSUHA
- 貴様もか
正義とか謳ってたから少しは俺の気持ちがわかってくれると思ったが
やはり期待ハズレだったかww
NATSUHAはハンマーを装備し、大きく振りかぶった。
虹色のオーラも出ていて、ハンマーヘッドがだんだんと大きくなっていく。
5
(…ヤバイ)
俺は焦っていた。
話をしているタイミングで攻撃を仕掛けてくるなんて思ってもいなかったから。
慌ててコントローラを握る。
だけど、今のNATSUHAにはどうにも勝てる気がしなかった。
- NATSUHA
- 所詮貴様も
『自分の価値でしか善悪を判断できない哀れなヤツ』
だなw - DINA
- 誰が哀れなヤツだって!?
NATSUHAの歪んだ考えの方がずっと哀れだ! - NATSUHA
- それは違うぜww
世の中はな『強い者が正義』なんだ
The strong are justice.
強者の意見がすべて正しいのだ!
今ここで証明してやるからな
6
NATSUHAのハンマーヘッドはかなり巨大化していた。
元の大きさの3倍、いや5倍はあるのではないかと思うくらい。
こんなの食らったら、一撃で負けてしまう。
(どうしたら、いい)
距離を確保したところで、巨大化したハンマーヘッドから逃れることはできないだろう。
しかし近づこうとしてもダメ。不完全な状態でも攻撃を仕掛けてくるに違いない。
離れても、近づいても、きっと逃れることはできない。
焦りが俺の手を濡らし、心臓の鼓動が余計に思考の邪魔をする。
(なにか、なにかあるはずだ!)
藁をも掴む思いで、アイテムを開きズラーっと並んだリストを見る。
その間にもハンマーヘッドは大きくなり続けている。
あたふたとしながら指で追い、ついにひとつの希望が見つかる。
「あった!これならいける!」
コントローラを持ち、装備を大剣からマグナムに切り替えた。
警告のようなウインドウが表示されるが、邪魔だったので消し、無事装備完了。
すぐにNATSUHAの方へと銃口を向けた。
7
- NATSUHA
- なに?!マグナムだと!
NATSUHAもマグナムを持っていることは予想してなかったらしい。
- DINA
- これで勝敗はわからなくなった
銃はキャラクターの攻撃力に左右されない
つまり強い銃を使えばどんなに強い相手にだって勝てるんだよ
今装備したマグナムは、銃のなかでも上位を争う攻撃力の高さ。
NATSUHAでも、ノーガードでヒットしたらただでは済まない。
- NATSUHA
- お手本のような解答だ!
だが貴様の答えでは94点にしかならんww - DINA
- そんな大きなこといってられるのも今のうちさww
- NATSUHA
- なんだと!
チャットが表示された瞬間、俺は引き金を引いた。
蜂の巣にするつもりで、何度も、何度も、何度も。
8
しかし、NATSUHAの体力は減っていない。
引き金は何度も引いた、弾切れでもない。
なのになぜ、NATSUHAへのダメージは0なんだ。
- DINA
- な、なぜだ
俺は唖然としていた。
パソコンのディスプレイの前で口が半開きになっていたと思う。
- NATSUHA
- なんか納得していない様子だなw
チャットウインドウをよく見てみろ
NATSUHAの言葉に誘導され、チャットの履歴を確認すると、
- お知らせ
- レベルが低いため打てません
- お知らせ
- レベルが低いため打てません
- お知らせ
- レベルが低いため打てません
という具合に、たくさんのお知らせが並んでいた。
試しに一度引き金を引いてみる。
- お知らせ
- レベルが低いため打てません
しっかり表示されてる。
- NATSUHA
- 確かに銃は攻撃力に左右されない
だがレベルが低い場合は装備ができても撃てないようになっているんだよ!w
警告出たのに無視してたのかw
頭に血が昇っていて、NATSUHAのハンマーにも驚いていたから警告なんて知らないし。
- NATSUHA
- さぁ終わりにしよう
グラヴィトンハンマー!
NATSUHAは巨大化したハンマーを振り下ろした。
回避しようとダッシュで逃げたが、大きくなったハンマーヘッドの攻撃範囲は広く、避けることは出来なかった。
大きなハンマーヘッドにDINAは潰されてしまう。
画面には倒れたDINAと『NATSUHA win』の文字が表示されていた。
続く。
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