【第38回】空想戦記 -Sky Fliers Online-

前回まで、

第37回 空想戦記 -Sky Fliers Online-

Think about it

1

深夜2時。

俺はある人をさがしている。

昼間にはまったく姿を見せないあの人。

多分、深夜に出没するとみてさがしている。

次の日も学校がある。

俺は『徹夜で残業している会社員か!』と心でツッコミを入れながら、

目を擦り、ブラックコーヒーを一気に飲んだ。

しかし見つからない。

「ったく、どこにいるんだよ」

どこをさがしてもみつからない

今日はログインしてないんだろうかと半ば諦めモードでさがしていたその時だ。

ITOSHIKI
さがしているのは、私か?

チャットと同時にITOSHIKIが現れた。

DINA
あぁ、さがしたよITOSHIKI

2

ITOSHIKI
で、なんの用だ

ITROSHIKIに会いたかった理由は、

DINA
スカルダがどこにいるか教えてほしい

その一点。

ITOSHIKI
なぜ私に聞くのだ
DINA
ITOSHIKIはサービス開始当初からこのゲームにログインしていただろう
だからスカルダのことだってわかるはず
ITOSHIKI
わかるわけないだろう
NPCなら教えることが可能だが、ログインしている人のことなど知るわけがない

ITOSHIKIは呆れているようにも見える。

DINA
…ダメか

俺のテンションもガタ落ちだ。

ITOSHIKIならきっとスカルダの居場所がわかると思ったのだけれど見当違いだったみたい。

計画が丸潰れさ。

ITOSHIKI
一つ聞きたい
DINA
なんだ?
ITOSHIKI
SKULDAをさがしてどうするつもりだ?

今度はITOSHIKIが問いかけていた。

俺は怯むことなく答えた。

DINA
『あの事件』のことについて色々と聞いてみる
ITOSHIKI
DOLPHIN事件か

重要なことは伏せたつもりだが、すぐにバレてしまった。

いや、とても有名な事件なのだろう。

DINA
さっきまでググって調べたんだ

自信満々に答えることができたのは、まとめサイトに書かれていたことが全て真実だと思ったから。

ITOSHIKI
お前はDOLPHIN事件を知って何を感じたんだ?

3

DINA
それは、
スカルダがチートして、DOLPHINが消されて事件が解決したと思ったけど
ITOSHIKI
事件は解決した、かwwww

この『w』は明らかに馬鹿にするような使い方だった。

怒りでキーボードを強めに叩く。

DINA
馬鹿にするな!
ITOSHIKI
すまないw
ただ、お前は『本当のこと』を知らないんだなと
DINA
本当のこと?
ITOSHIKI
こちらから質問するが、
DOLPHINが消されたのに、
なぜまだKILL°°BEが存在しているんだ?
DINA
えっ、なぜって、、、、
ITOSHIKI
やっぱり
お前はわかった気でいるだけの
知ったかぶりなんだなww

今日はなんだかITOSHIKIに馬鹿にされてばかりのような気がする。

深夜だからか気持ちにも余裕がない。

DINA
なんだよ!馬鹿にした態度取らないで真実を教えてくれよ!
ITOSHIKI
ダメだ
DINA
なんだよ!ケチ!

ITOSHIKI
黙れ!
甘えるな!
お前は1人では何もできないのか!
そんな甘い考えを持っている貴様が
強くなるなんて1000%不可能なんだよ!

ITOSHIKIの語気は相当強い。

文章だけでも迫力があり、頬をビンタされたような感覚になる。

ITOSHIKIから詳細を聞き出そうとしてたのは本当だし、それが一番の近道だと感じたから説教された気持ちだ。

俺は甘えていたのかもしれない。

どうやって返信しようか考えていたが、いい言葉が思いつかない。

もたもたしているうちに、ITOSHIKIから返信が来た。

ITOSHIKI
考えろ
自分の力で考えろ!
疑うものと信じるもの
自力での取捨選択は難しいかもしれない
ITOASHIKI
だが、与えられた情報だけを鵜呑みしていたら
真実にはいくら頑張っても近づけないんだ
自身で考えてこそ真実に近づける
自分自身で考えるんだ

この文章がチャットウィンドウに表示されると同時に、ITOSHIKIはログアウトしてしまった。

結局真実はわからないままだ。

俺もチャットの文章を読んだ後、眠気の限界が訪れ、

キーボードに倒れこみ、そのまま夢の中へログインした。

次の日、遅刻して怒られたことはいうまでもない。

続く。

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ムツキ
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いつでもそこにいるブロガーを目指してる30代農家。 何でもアリの雑記ブログやケータイ小説などを書いてます。