前回まで、
学校にて
1
ということで、昼休み。
今日は珍しくカナタも俺たちと共に春休みを過ごしている。
普段だと、同じクラスの仲良い女子や隣のクラスに行く。
なんか怪しいけど、気にしないようにした。
「永太くん、元気出しなって。君は十分すぎるくらいガンバったんだから自信持ってねッ」
カナタは永太の肩を叩きながら、予選落ちしたスポーツ選手を励ますような感じで話した。
「あ…ありがとう」
永太はカナタの励まし効果もあってか、昨日とはうってかわって元気だ。
しかも若干照れてる。相変わらず女子には抵抗力無いみたい。
「ってか、その夢スゴいな!」
「え、なぜだ?」
永太の突然過ぎる関心に俺は困った。
「夢で柔道習ってるって言ってたみたいだけど、それは事実だしね、肇に言ったこともないし」
永太の発言に驚いた。
この現象って正夢?
それとも予知夢なのかな?
「へぇー永太くんって柔道もやっているんだぁ、全然そんな風に見えないよ」
カナタも驚いていたようだ。
「半強制的なところはあるけどね、やらされているって感じかな」
永太は照れていた。半強制と言ってはいるが満更でもないみたい。
「ほぉ八方美人ってやつだねぇ、勉強もスポーツも出来るというやつ」
「それを言うなら文武両道だろ、せめて才色兼備と言ってくれ」
「えっ!八方美人じゃなかったの?」
永太が訂正してくれたが、なぜ間違ったか知らずポカンとしている俺。
間抜けな姿の俺を見てカナタが教室に響く大きな声で言った。
「ハジメはホント頭弱いね!」
おかげでクラスのみんなに『頭弱い』と思われてしまった。
2
「そ、そういえば気になったことがあったんだけどきいてもいいかい」
俺は話題を変えた。
別に動揺してた訳じゃない。ただ、昨日きけなかったから今日きこうと思っただけ。
「いいよ、なんだ気になることって」
「なになにー私にもきかせて」
カナタも会話に割り込んできた。
「カナタには関係ない」
なんせオンラインゲームのことだから。
カナタにはついていけないと思っての配慮だ。
「なにさそれ!私だけ仲間はずれなの?!」
カナタは怒りながら『ぷぅー』と頬を膨らました。
案外ふくれてるカナタも可愛いかもしれない。
「聞いてもわからんぞ、まぁそれ…「で、用件はなんだ?」
脱線した話を元に戻すように、俺とカナタの会話に割り込んできた。
「そうそう、ITOSHIKIが『KARASを見つけたらメニューを開け』って言ってたんだけどなぜメニューを開くかわかる?」
「うーん謎だなぁ、多分だけどメニュー開いたらマップも同時に出てくるじゃん、それを見て逃げ道を確認しろって言ってるんじゃないかな」
腕を組み、首を傾げながらゆっくりと言った。
「やっぱりそうか」
「やっぱりって、予測できてたんかい!」
「いや、確認だよ確認。あのゲーム歴長いのは永太だからさ」
なんか自信がなかったんだよね。
だから友達にきいて、意見が一致したらそれが答えのように思える。
そんな確認さ。
「それじゃ今日早速ログインだな」
自信が付いた俺は永太にそう言った。
KARASってプレイヤーがTeam Xのメンバーなら必ず手掛かりが掴めるハズ。
そんなやる気の俺に対して永太は、
「んー今日は用事があるから先にやっててくれ」
なんともやる気のない返事だ。温度差を感じるよ。
「わかった、あっ!勉強するからログイン出来ないは無しだからな!」
「わかってるって。そんなことはしないから安心しな。遅れても必ずログインすっからさ」
3
「フッフッフー訳わかんねぇだろ」
カナタに向かって得意気な感じで言い放った。
しかしカナタは『それがどうしたの?』というような顔をしてた。
「え、全部理解してたけど」
言い切ったタイミングでチャイムが鳴った。
5時間目の教科担任が現れて「席につけー」と促してる。
カナタも自分の席に足速と戻っていった。
「ちょ、どういうことだ?カナタ!カナター!」
訳がわかってなかったのは、俺だったのかもしれない。
続く。
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